幸福論 =4=

Episode.167 ページ25

｢君のその生に縋りつく心は大事なものだ。だが君が、自分より仲間の命を優先するように、彼らは自分より自分の決意を優先させているに過ぎない｣

｢その決意のために死んだら、意味が無い……｣

｢君がその能力を得たのは、君のその考え方故だろう。そして、それも間違っていない｣


こうなりたい。こうしたい。こうする。
そう決意をして先に進む。それでその結果死ぬことが幸せなのだろうか。何かを得るには代償がいる。決意を果たす、その代償が死であることに、納得できるわけがない。


｢君は少し考えるといい。どちらにしろ、その体では満足に出歩けないだろう｣


そう言い残して出ていってしまった。今はみんな、トリッシュやジョルノと出会ってあちこち巡っているころだろうか。リゾットだけが全てを知っているから、もうそれを話したかもしれない。

それなら確実に未来が変わっている。
読まなければ。
＿＿みんなが頼ってくれている、この能力に


｢とりあえず、寝よう｣


怪我を早く治す。そうすれば、強行突破もできるかもしれない。……考えろと言われたが、Aの命より大切なものは仲間くらいだ。自分の決意のために死ねるか、と言われてもきっとできない。

口では言えても、きっといざその瞬間になれば死にたくないと思うだろう。最後の最後で決意なんて捨てて、生きたいと思うだろう。

＿＿＿＿＿＿＿＿
＿＿＿＿＿＿＿＿

｢みんなは、無事なんですか？｣

｢私もそんなにこまめに連絡はとっていない。今度聞いておく｣


そんな悠長なことを言ってる場合じゃない。ブチャラティ達と戦っていないなら、みんなが死ぬ確率はかなり下がったはずだ。だが問題は、ボスと直接対決するブチャラティ達。今彼らの未来はどうなっているのだろう。


｢信じてやったらどうだ｣

｢信じてます｣

｢とてもそうは思えないが｣


そう言うと、食事の時間だけ伝えてどこかへ行ってしまった。どういうつもりなんだ。信じている、信じているさ。それとも、こうして心配に思ってしまうのは信じれてないからなのか？

……会いたい。会えばきっと分かる気がする。

指輪に触れて、難しいなと呟く。
彼が考えろと言ったことは難しい。どれもこれも抽象的過ぎるし、何より考えたところで全部自己満足だろう。本当のことは、本人に聞かないと分かりはしない。









(ギアッチョはこういう時)
(なんて言ってくれるだろう)
(静かに隣にいてくれるだろうな)

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