おはよう、しようか。 ページ50
【教えて、ママ。どんなルールに従えば、この苦しさは消えるの？】
真っ白い空間ですべてを吐き出したバラ寮長は、俯きながら涙を流し始めた。
俺がなにも話さない空間に、バラ寮長の嗚咽が響いている。
........
『バラ寮長。』
そう言った俺は彼に近づき、
おもいっきりデコピンを食らわせた。
「いっ！！？」
泣くのも忘れる痛みに悶えるバラ寮長は額を押さえ、俺を見た。
『俺よりデカイやつがなに泣いてんのさ。』
「.....」
『.....
俺さあ、バラ寮長に言いたいことあるんだよね』
牡丹色の瞳のなかに黒い四つの花びらが目立つ俺の目と、バラ寮長のグレーの瞳があう。
『....お前さ。
その生き方、キモくない？』
「キモ、！？」
バラ寮長は俺の台詞にショックを受ける。
『キモいよ。だってどうでもいいことばっか気にして、自分の本当にやりたいこと、満足にできてないじゃない。
俺の生き方は極端。どうでもいいか良くないかで物事を判断してる。でも、バラ寮長はそんなの無いみたいな扱いしてるよね。
つまりさあ。』
俺は手を伸ばし、バラ寮長の頭に手をおいた。
『バラ寮長は頑張りすぎなんだよ。余計なことまで気を張りすぎ。
もっと、頼れば良いんだよ。』
「....
っ、え、」
目を見開いたバラ寮長の頬に、一筋の滴が流れる。
「.....そう、なのかな」
『俺目線からしたら完全にそうだね』
バラ寮長から手を離し、ため息をつく。
『ほどほどにしたらいいんだよ。バラ寮長の性格的には無理だろうけどどうでもいいとか思ったら全部無視するとか。』
「....そんなことをしたら、寮内が緩みきってしまうよ」
『......ちょうど良けりゃいいんだよ』
そう言うと、バラ寮長は一瞬だけ緩んだ空気にはりつめた糸が切られ、ボロボロと泣き出した。
「.....う、うう.....」
『...はぁ....泣かないでよ。俺の育ててるバラは皆人の涙を見たくないんだからね。勿論バラ寮長のも』
泣きじゃくるバラ寮長をお父さんがしてくれたように抱き締める。お腹周りしか出来ないけど。
「....ありがとう」
その声が聞こえた次の瞬間、俺はまた意識が消えた。
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