何の変哲もない1話 ページ2
……汗だくだ、気持ち悪い。
天蓋付きのベッドから降りる。
部屋に備え付けてあるシャワーへと向かい、汗を流しながら考える。
こんな便利な所だけはお金持ちな家でよかった。
私の父は大手食品メーカーのトップに立つ信楽グループの社長。
昔からある由緒正しい家である。
勿論子供も厳選を行っている。
使えない子供はまるでゲーム感覚で、ポイポイと捨ててゆく。
私は個性婚によって生まれた子供。
厳しい特訓を受け、この世の勝ち組として生きることを余儀なくされた子供である。
泣き叫んでも親は見向きもせず、ある意味虐待紛いのことをされ育ってきた。
そんな地獄のような生活のなかでも、親に対する愛情だけはなぜか残っていた。
そう、あの時までは。
蛇口を、まるで首を絞めるかのようにギュッと捻りシャワールームを後にする。
高校に行く支度を始める。
そして、また想像する。
あれは、私が4歳の頃のできごとだった。
私には腹違いの姉がいた。
姉は賢く、運動もできる、それはそれは美しい子供だった。
しかし、そんな完璧な姉には個性がなかった。
姉を猫可愛がりしていた親は手のひらを返し、姉を捨てた。
当時、厳選されたなかで残されていたのは私と姉のみ。
家族に触れる機会の少なかったこの家で、唯一触れ合うことの多かった家族だった。
私の個性は治癒、それもリスクの全くない俗に言うチート個性。
私の母の個性が肉体の超再生、父の個性が筋力増強、なので私は怪我も瞬時に治るし治癒をした相手の筋力を1.5倍増強させることができる。
無論、自分にも可である。
そんな厳選されたチート個性な私だけが広い広いこの家に、ひとりぼっちになってしまった。
私は親が姉を捨てた時から考えた。
どうすれば親の支配下から抜け出せるか。
しかし、先週、運のいいことに母が失踪した。
そしてその1日後から、母の体の一部が送り付けられるようになった。
最初は、爪、その次は、歯が沢山。
そのまた次は爪の無い手足が4本。
またまた次の日は、大量の髪の毛。
一昨日は腕と脚の骨。
昨日は下半身。
今日は恐らく上半身であろうと予想した私は、
明日、残った頭が届くのをウキウキしてまっていた。
だからだろう、私は母への最後の憎しみを絞り出すかのようにあの時の夢をみたのではないかと思う。
あぁ、今からワクワクして、背筋がゾクゾクする。
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