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「というわけで、今日から卒業試験までの1年間。共に騎士道を歩む新しい仲間だ。
さ、自己紹介を」
「…アダム=ユーリエフです。よろしくお願いします」
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朝早く、ジェニドに連れてこられたアダムは
こちらを奇異の目で見つめる生徒たちに深々と頭を下げた。
その表情からは、こちらを嘲るような感情が読み取れる者もいる。新入りだから、という理由でなんの根拠もなしに自分達よりも下の人間だと思っている。
スラムで、嫌という程見てきた顔だ。
(しかし、これも特訓…陛下の御恩に報いるためには…必要なことなんだ…)
ぐっと唇を噛み締める。
好成績を残すためには、他生徒との衝突は禁物。
そうだ…他人とは必要以上に付き合わなければいい。自分は、自分のためだけに精進していればいいのだ。
将来のために、“ この場所での ”評価が必要
という、ただそれだけの話なのだから。
「それでは各自、時間には遅れないように。
9時から稽古を開始する。解散!」
しかし、その士官学校での生活は
想像していた以上に厳しいものだった。
…………
予想した通り…と言ってはなんだが。
転入して1日目にして事件は起こる。
「ぐあっ…!」
「……勝負あり。次の組みに交代しろ」
「はい」
その日、指南役であるジェニドの前で、一対一の稽古を行った際
アダムは、事もあろうに自分と組んだ相手を片っ端から跳ね飛ばし
圧倒的な実力の差を見せつけた。
転入生ということもあって、その力量が未知数であることは皆承知していたが
生徒達一同、まさかこれほどのものとは予想していなかったらしい。
何せ、3年間鍛え上げてきたはずの剣術が、相手に掠りもしないまま
一瞬で勝負がついてしまうのだ。
新入りであるはずなのに、実力はこの中の誰よりも強い。
努力して磨いてきた技が、なんの功を奏すこともなく踏み潰されていく。
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なのに、踏み潰した側は涼しい顔だ。
何一つ動揺せず、まるでそれが当たり前であるかのように戦っていた。
歯牙にも掛けぬとはまさにこのこと。
異様なほど静かに、冷酷に、まるでこちらの事などただの踏み台だとしか思っていないようだった。
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そして、ジェニドが危惧していた通り、
僅か1日にして、アダムは完全に孤立することと相成ったのだ。
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ノズル - コメントしてくれても…ええんやで(定期) (2018年12月2日 17時) (レス) id: 29d62f5c94 (このIDを非表示/違反報告)
ノズル - 復帰しました (2018年8月13日 9時) (レス) id: da0e8a2348 (このIDを非表示/違反報告)
ノズル - 本作でもよろしくお願いします。 (2018年7月24日 6時) (レス) id: da0e8a2348 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ノズル | 作成日時:2018年7月15日 14時