第17話 齟齬 ページ6
.
………
翌朝、曇天の空の下
回廊をひとり歩いていた騎士団長アダム=ユーリエフは
物憂げに雪の残る中庭を見つめる人影に出くわした。
.
「………何をしているんだシーク。こんなところで…風邪をひくぞ?」
いつもなら、ここで冗談めかして笑顔を浮かべるのが彼、シークの流れなのだが
今はその表情も 視線すら、全く動く気配がない。
(…何かあったのか……)
そうは思いつつも
やはり、アダムは必要以上に踏み入ることはしなかった。
「……ソーンが待っていたぞ。早く行ってやれ」
コツコツ、と自身の靴音だけが響く。
通り過ぎようとした、その時
「なぁ、アダム」
.
.
驚くほど、低い声だった
「お前はさ、リョーフキーのこと、どう思う?」
驚いて振り返る。
普段の彼からは想像もつかないほどの、
声音と気迫。
唖然としてそのまま固まっていると、シークの深い赤褐色の目が自分を捉えた
.
「教えてくれよ。アダム。
お前はどうしてリョーフキーと一緒にいるんだ?
俺はお前が王宮に引き取られた時の“お前”しか知らない。
他人を嫌っていたお前が、他人を拒絶していたお前が、なぜあいつと一緒に居ることを選んだのか。
知りたいんだ。
ただ、単純に」
.
その深い赤は、気を抜けばたちまち吸い込まれてしまいそうで
だが、綺麗、と形容するのとは少しだけ違っていた。
じっとりと絡みつく。
それでいて冷ややかで。
足元から侵食されるような。
そんな感覚。
今までに感じたことのない“恐怖”に
アダムはたじろぐ
しかしその気配は
次に意識を向けた時にはもう露と消えていた。
そこにいるのは間違いなく自分の友人で、
彼はこちらを試すように、美しい微笑を浮かべている
「どうしたのさ?俺より長い付き合いの友人との出会いを語るのがそんなに恥ずかしいか?
アダムも案外可愛いとこあるね〜〜〜」
「な…ッ、茶化すなシーク!!」
「じゃ、仕事終わったらお前の執務室行かせてもらうから。午後3時から5時までは空けとけよ」
「チッ…命令するな。仮にもお前の上司だ」
「へいへい。わかってますよー」
.
そうして冗談を交わす頃には
シークに感じた謎の“恐怖”のことなど
アダムはとうに忘れていたのだった
.
49人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ノズル - コメントしてくれても…ええんやで(定期) (2018年12月2日 17時) (レス) id: 29d62f5c94 (このIDを非表示/違反報告)
ノズル - 復帰しました (2018年8月13日 9時) (レス) id: da0e8a2348 (このIDを非表示/違反報告)
ノズル - 本作でもよろしくお願いします。 (2018年7月24日 6時) (レス) id: da0e8a2348 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ノズル | 作成日時:2018年7月15日 14時