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………………………
王城の中に設けられた一室。
アダムは何故か眠る気になれず、一人で本を読んでいた。
昔から寝るのはあまり好きではなかったが、ここのところはさらに調子が良くない。
自分の過去を反芻するような夢を見たり、たくさんの声がざわざわと蠢いていたり、近頃はだいぶマシになったと思っていたのに。
「…………」
単純に精神が不安定なだけかもしれない。
そう思って、今一番気がかりな事…シークがレオンブルクの人間であるかもしれないという疑惑を確かめるために、アダムは普段接する機会のない本に、こうして向き合う事にしたのだ。
しかし、どんな本にも、“南方の少数民族に黒髪を持つ種族がいる”としか書かれていなかった。これだけでは、シークの正体に迫るにはあまりにも証拠が無さすぎる。
と、その時、アダムは はたと気づいた。
何故、自分はシークの正体を探ろうとしているのだろう。
勿論、黒髪という要素だけで敵国の人間と判断するのはあまりにも安直だが、彼がレオンブルクの血を引いているのはほぼ確実。
思い返せば自分はシーク以外に黒髪の人間を見たことがないし、異国の人間と考えるのは必然と言える。
例えシークがユランブルクの生まれであっても、レオンブルクの血筋を持つ人間を王城に出入りさせるわけにはいかない。そういうしきたりなのだ。そういう決まりで、これはそうしなくてはならない義務なのだ。
なら、どうして自分は
こうも彼の正体に迫ろうとしているのか
何処かに仮借の余地がある、そう思っているのか
もし、自分がシークとなんの繋がりも無かったら
シークが、本当に赤の他人だったら
自分は間違いなく。
彼を殺していただろう。
そうしないのは、心の甘えだろうか。
この情は、殺すべきなのだろうか。
初めて人を殺し、魔剣という悍ましい存在をその身に宿したあの時のように。
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と、流し読みしていた本の一節に、ふと目が止まった。
「……………大火災…?」
その本は、レオンブルクの来歴をまとめたもので、民族史とはあまり関係が無かったのだが、みると今から17年前にレオンブルク王宮で起きたとある事件の内容が記されていた。
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ノズル - コメントしてくれても…ええんやで(定期) (2018年12月2日 17時) (レス) id: 29d62f5c94 (このIDを非表示/違反報告)
ノズル - 復帰しました (2018年8月13日 9時) (レス) id: da0e8a2348 (このIDを非表示/違反報告)
ノズル - 本作でもよろしくお願いします。 (2018年7月24日 6時) (レス) id: da0e8a2348 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ノズル | 作成日時:2018年7月15日 14時