埋み火 second【#コンパス】【男主】【アダム・ユーリエフ】 (ページ34)

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第25話発端ページ34

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…………

「おいシーク！！ちょっと薬草棚の…例のあれだ！アレ取って来て！」

「シークまた患者来た！応対お願い！」

「シークさんこの問診票なんですけど…」

「シーク先輩！薬草の調合ってこの器具使えばいいんですよね！ね！？」

「すまないシーク。この前の戦で負った腕の怪我が稽古で悪化したらs」「黙れ。すり潰して伝令ヒュドラの餌にするぞ。」

冬も真っ只中に差し掛かり、今日も王城の薬室は大盛況。
そんな中シークは、同僚達から大量の仕事を押し付けられ精神体力共に疲弊していた。

もはや患者だからという理由でアダムに気を使ってやれるだけの余裕もない。盛大にため息をつく。

「ふふふ、兄様と先生は本当に仲がいいんですね！」

それを見ていたソーンは、読んでいた本から顔を上げ、微笑んだ。

「ソーン、これ終わったら次はお前の治療に移るから。はい背筋伸ばす！！！」

「はい！」

「12歳という若さでこれだけ肩凝るとか俺先行き不安なんだけど…」

「もうすぐ13歳です！」

「あ、そう…」

真冬といえど、ソーンの居住施設であるこの温室は年中を通して魔法で気温が一定に保たれている。
今日も数多の草花が咲き乱れ、噴水の側には数匹の蝶が舞っていた。

シークが包帯でアダムの腕を固定している間。また静寂が流れる。

ソーンは、しばし2人の方を見て、また本に目を戻した。

と、

「あ、そうだ。肩凝りによく効く薬草、最近薬室長に購入してもらったんだった…調合しといたのに…ごめんなソーン！ちょっと取ってくる」

そう言って、シークはその身の白衣をなびかせて全力疾走していった。

「…ソーン。隣いいか？」

「もちろんです。兄様。」

噴水のへりに2人で並んで座る。ここは2人だけの特等席のような場所なのだ。

「………最近、勉強は楽しいか？」

「はい！先生の教えの甲斐あって、今では何不自由なく古語を話せるようになりました！」

「ははっ、ソーンは凄いな」

アダムがソーンの頭を撫でる。自分と比べ、まだまだ霞みがかっていない綺麗な白銀の髪。ソーンは嬉しそうに目を細めた。

しかし、急に重苦しい雰囲気になると、目を伏せる。

「…………兄様。シーク先生のご家族って、ご存知ですか？」

「え…どうしたんだ突然……えっと、何年か前に父親が亡くなった…と聞いたが」

ソーンの表情はいつになく、苦しそうだった。

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