埋み火 second【#コンパス】【男主】【アダム・ユーリエフ】 (ページ26)

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………

そうして料理を堪能し終わった3人だったが、意外なことに一番はじめに席を立ったのはシークだった。

「俺は朝イチで会合あるからもう寝るわ。
積もる話もあるだろうし、後は2人でどーぞ」

朗らかに笑みを浮かべて去っていったのには、アダムとリョーフキーへの配慮でもあったのだろう。

暖炉の灯りはついたまま。

ほのかな明かりに照らされて、室内には暖かな空気が満ちていた。

「…………」

「…………」

しばらくの沈黙

「…………リョーフキー」

先に口火を切ったのはアダムの方だった。

「…下世話な事だとは、わかっている…けれど、もし叶うのなら、教えてくれないか。お前が今まで、何を思い、何を抱えて生きてきたのか。

…もしもお前が塞ぎ込んでいた原因が俺にあったのなら謝る。償いとして出来ることがあるならなんでもさせてくれ。

だから…その…」

しかし、伝えようとした感情はするりと抜けて輪郭をぼやかしてしまった。

戦場で、リョーフキーを失いたくない、と思ったその感情。しかしそれを示す言葉がアダムにはわからなかったのだ。

憂い、悲しみ、怒り、憤り、迷い、苦しみ、痛み、寂しさ……？

どれも、あの時の思いを上手く表現するには至らず、アダムはその先の言葉を見失う。

だが、リョーフキーの理解は得られたようだった。

視線を泳がせるアダムに向き直ると、深く頷いた。

「いいよ。わかった。でも、アダムが怒りそうな話とかもあるよ？」

「…構わない。そうなったら、ちゃんと怒ってやる」

「うわ、そこは容赦なしか」

はにかんで微笑んだリョーフキー。少しだけ不安の色が浮かぶ目元は、それでも澄んだ輝きがたたえられていた。

「じゃあ、信じていいんだな？」

「ああ」

「…引いたりしないか？」

「勿論」

「………本当に？」

「……本当だ。あーもう回りくどい早く話せ！お前らしくもない」

二人はそうして、盃を交わした。

酔い過ぎず、覚め過ぎず、お互いにほんの少し饒舌になるくらいの、僅かな酒を含み、

笑いあった。

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夜は更けていく。

2人が深夜を幾分か過ぎてから各々の寝室に戻り静まり返ると、機を見計らったようにシークがリビングへとやってきた。

そして消された暖炉に歩み寄ると、

「combustione」

小さく呟いて、炎を灯す。

「ま、上々だ」

不敵に、微笑んだ。

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