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小一時間ほど談笑したところで、4人の王子達の迎えが訪れ、兄弟仲の茶会は御開きとなる。
家族を守るためならば手段は選んでいられないと、マリアは強い決心を宿した声音で話していた。





「なんだか…姉上も変わったよな」

「どういうことですか?レクエルド兄様?」





帰る途中、小さく呟いたレクエルドに双子の片割れのラスティアが声をかけた。




「いや、姉上はレオンブルクの国民性を体現されたような人だろう?慈悲深くて情熱的で…なのに、敵軍にはあれだけ慈悲を捨てて立ち向かっておられる。これは…皮肉なものと捉えていいのだろうか」


「………姉様は、望んでこの道を選ばれている。それを哀れむのは……見当違いかと」


「そうだな…愛国心ゆえの無慈悲さという事もあるだろう。それに…」







レクエルドは離宮の片隅に建てられた、小さな石柱に目をやった。







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「もう二度と、あんな思いはしたくないだろうから」








……………







レクエルドと双子のラスティア、アグレリアが足早に去っていったのに対し、次男のナーダは未だに机の上の菓子を名残惜しそうに頬張っていた。



「ナーダ…欲しいなら全部持って帰っていいのよ」



そう言って苦笑するマリアは、しばらく待って、ナーダの手が止まるのを待った。やがて最後のクッキーが飲み込まれるのと同時に、

ナーダは兄と同じ菫色の瞳を伏せ、虚空を見つめた。




「…………姉さん、何か隠してるでしょ」

「何のこと?」

「兄さんから聞いた。姉さん、今年の大戦が始まる前に転がり込んできた男に大分目をかけていたらしいけど」

「怪我人だもの」

「だからって毎晩顔見に行ったりはしないよな。」

「そんなことないわよ」







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「………ま、話したくないなら、別にいいけど」





諦めたのか、ナーダは踵を返す。
しかし振り向いた。





「姉さん。まだ、俺たちに後ろめたいって思ってるなら、とんだ思い違いだ。

俺たちだって後悔してる。もう何も知らない子供じゃなくなったんだ。

だから、

無理だけはしないで」







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駆けていくその背中を、マリアは最後まで見つめていた。

ナーダは兄弟の中でも一際聡い。だから今までもマリアの変化にいち早く気がつくのはナーダだった。
マリアは天を仰いだ。







秋風澄み渡る空を轟々と唸る炎が埋め尽くした、15年前のこの日。

マリアは母を亡くした。

今日は母の命日だった。


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第22話 惜愛→←第21話 追憶



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ノズル - コメントしてくれても…ええんやで(定期) (2018年12月2日 17時) (レス) id: 29d62f5c94 (このIDを非表示/違反報告)
ノズル - 復帰しました (2018年8月13日 9時) (レス) id: da0e8a2348 (このIDを非表示/違反報告)
ノズル - 本作でもよろしくお願いします。 (2018年7月24日 6時) (レス) id: da0e8a2348 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ノズル | 作成日時:2018年7月15日 14時

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