埋み火 second【#コンパス】【男主】【アダム・ユーリエフ】 (ページ20)

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リョーフキーは、しばし虚空を見つめた後
シーク、と彼の名を呼ぶ

赤褐色の瞳が、訝しげにこちらを見つめ、目があった

「…………お前は、俺にどんな価値があると思う？」

「……は？」

「魔法も使えない、家族とは…アダムから聞いた通り、あんまり仲良くない、期待もされてない。取り柄といえば、少し奇襲が上手いだけ。

…………こんな俺に、お前はどんな価値が見出せると思う？」

その表情が声音が。
いつもの自虐的な節を含んでいないことを汲み取ったシークは、一旦は嫌そうな顔をしたものの少し俯いて考え込んで

そして、にっこりと笑った。

「お前の側に、アダムが居て、ジェニドさんが居て、同じ戦場に立つ仲間が居る。それが、お前に価値があることの証明なんじゃないかな」

「……価値の…証明？」

「そう。俺は戦場に立ったことはないから、戦場でのお前の価値なんてわからない。

でも、アダムやジェニドさんがお前のこと大事にしてんのは痛いほどわかるよ。それにお前の部隊の奴らもな。

俺が、意識の戻らないお前を引き取るって言った時、そいつら総出で俺のところに土下座しに来たんだからな？

……それだけいろんな人に大事にされてんだ。

そんなお前に「何の価値も無い」なんてこと、あり得ないだろ？」

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自然と、その言葉が身体に染み渡るような心地がした。

リョーフキーはゆっくり深呼吸をすると、すっかり細くなった腕を見つめて

「……………頑張ってみるか」

微笑んだ。

「………」

芯の通った、真っ直ぐで、優しくて、勇気があって、情熱的で、

どんな時でも前へ進み続ける。

それが、リョーフキーという人間の本質。

シークは、昔初めて出会った頃の彼を思い出した。

アダムの隣で笑っていた、彼のことを。

「さてと………ほら！まだ夕飯残ってるから、さっさと食って寝ろ！明日からリハビリ地獄だからな！」

「了解、よろしく頼むぜ、お医者さん☆」

「そういうのが玉にキズなんだよ…」

「え、なんて？ちょ、無視すんなよシーク！！」

騒ぐリョーフキーを横目にシークは扉を閉めた。

その目が、廊下の隅に置かれた枯れかけの花が生けられた花瓶を捉える。

「そうだ…前に進めていないのは、

俺の方だ」

ささやかに紡がれた言葉は、誰の耳に届くこともなく

静かに、夜の闇へと紛れていった。

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