検索窓
今日:13 hit、昨日:0 hit、合計:14,314 hit

ページ19

.






…………






時刻は真夜中を過ぎた。

シークお手製の夕食を堪能したアダムは去り際に。






「シーク」


「?」


「……リョーフキーを、頼んだぞ」


「……任しとけ。必ず五体満足でお前のとこにお返ししてやるよ」


「…ああ。待ってる」






.







美しい笑みを残していった。



玄関の前に佇むシークは、1つ深呼吸をすると、先ほどまで自分達が居た部屋の、右隣の扉を開ける。







「…………さて、これで少しは話す気になった?」






閑散とした部屋の隅。

ベッドに横たわるリョーフキーは、泣いていた。




しばらくの間、押し殺したような悲泣の声が漏れ、それが鎮まると、リョーフキーはゆっくりと起き上がり、シークと目が合うと




「お前…悪趣味だぞ」



自嘲気味に笑った。







.







「なんで…アダムを連れてこようと思ったんだよ」




「たまたまそこで会ったから」



「嘘つけ」


「嘘なわけあるか」


「いいや、嘘だ」


「………」









「……お前は…もう、本当に、ずっと前から
俺たちの事を気にかけてくれてたんだな」




「…………」




「お前は、俺が魔法が使えなくて悩んでるのも、アダムと一緒に居ていいのか不安で苦しんでたのも、
全部わかってたんだろ?

前に飲み会やった時も、そんなこと聞いてたもんな。ありがとう。」







言うと、シークはいつもの笑みを崩し、眉根に深いしわを寄せ溜息をついた。






「………はぁ……俺さ。嫌いなんだよね。お前のそういう自己犠牲的で自虐気味なところ。

なのに…お前はそれを隠そうとする。
ヘラヘラ笑って、平気なフリして、傷ついてるのに傷ついてないような顔してさ。

だから心配だったんだ。
いつか、そういうお前の張り詰めてた糸がぷっつり切れて、自分から死を選ぶようなことをするんじゃないかって。」








シークの瞳が揺れる。








「だいたい、お前もアダムも無茶し過ぎなんだよ…

ただでさえアダムは聞く耳持ってくれないのに、お前まで居なくなったらどうしてくれるんだよ、
アダムが無茶して死なないように止めてやるのが…お前の仕事だろ…

アダム止められんのは…お前しか居ないんだぞ…」






.







苦し紛れに、心底呆れたように
とても悲しそうな声で

目を伏せるシーク。





リョーフキーがみたその姿は、普段の気丈な彼とは違って

ひどく、弱々しかった。








.

・→←・



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 8.9/10 (20 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
49人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ノズル - コメントしてくれても…ええんやで(定期) (2018年12月2日 17時) (レス) id: 29d62f5c94 (このIDを非表示/違反報告)
ノズル - 復帰しました (2018年8月13日 9時) (レス) id: da0e8a2348 (このIDを非表示/違反報告)
ノズル - 本作でもよろしくお願いします。 (2018年7月24日 6時) (レス) id: da0e8a2348 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ノズル | 作成日時:2018年7月15日 14時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。