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…………
時刻は真夜中を過ぎた。
シークお手製の夕食を堪能したアダムは去り際に。
「シーク」
「?」
「……リョーフキーを、頼んだぞ」
「……任しとけ。必ず五体満足でお前のとこにお返ししてやるよ」
「…ああ。待ってる」
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美しい笑みを残していった。
玄関の前に佇むシークは、1つ深呼吸をすると、先ほどまで自分達が居た部屋の、右隣の扉を開ける。
「…………さて、これで少しは話す気になった?」
閑散とした部屋の隅。
ベッドに横たわるリョーフキーは、泣いていた。
しばらくの間、押し殺したような悲泣の声が漏れ、それが鎮まると、リョーフキーはゆっくりと起き上がり、シークと目が合うと
「お前…悪趣味だぞ」
自嘲気味に笑った。
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「なんで…アダムを連れてこようと思ったんだよ」
「たまたまそこで会ったから」
「嘘つけ」
「嘘なわけあるか」
「いいや、嘘だ」
「………」
「……お前は…もう、本当に、ずっと前から
俺たちの事を気にかけてくれてたんだな」
「…………」
「お前は、俺が魔法が使えなくて悩んでるのも、アダムと一緒に居ていいのか不安で苦しんでたのも、
全部わかってたんだろ?
前に飲み会やった時も、そんなこと聞いてたもんな。ありがとう。」
言うと、シークはいつもの笑みを崩し、眉根に深いしわを寄せ溜息をついた。
「………はぁ……俺さ。嫌いなんだよね。お前のそういう自己犠牲的で自虐気味なところ。
なのに…お前はそれを隠そうとする。
ヘラヘラ笑って、平気なフリして、傷ついてるのに傷ついてないような顔してさ。
だから心配だったんだ。
いつか、そういうお前の張り詰めてた糸がぷっつり切れて、自分から死を選ぶようなことをするんじゃないかって。」
シークの瞳が揺れる。
「だいたい、お前もアダムも無茶し過ぎなんだよ…
ただでさえアダムは聞く耳持ってくれないのに、お前まで居なくなったらどうしてくれるんだよ、
アダムが無茶して死なないように止めてやるのが…お前の仕事だろ…
アダム止められんのは…お前しか居ないんだぞ…」
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苦し紛れに、心底呆れたように
とても悲しそうな声で
目を伏せるシーク。
リョーフキーがみたその姿は、普段の気丈な彼とは違って
ひどく、弱々しかった。
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ノズル - コメントしてくれても…ええんやで(定期) (2018年12月2日 17時) (レス) id: 29d62f5c94 (このIDを非表示/違反報告)
ノズル - 復帰しました (2018年8月13日 9時) (レス) id: da0e8a2348 (このIDを非表示/違反報告)
ノズル - 本作でもよろしくお願いします。 (2018年7月24日 6時) (レス) id: da0e8a2348 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ノズル | 作成日時:2018年7月15日 14時