埋み火 second【#コンパス】【男主】【アダム・ユーリエフ】 (ページ17)

今日:6 hit、昨日:0 hit、合計:14,307 hit

第20話友愛ページ17

.

………

「…………それで、そのあとジェニドさんにこってり絞られたってわけか」

一通り話を聞き終わったシークは、ゆっくりとコーヒーを飲み干した

空はもう、すっかり夜の闇に呑まれている

「絞られたという言い方はアレだが…概ねその通りだ」

「と、言うと？」

「……………あのあと、俺はこっ酷く叱られて、リョーフキーの怪我が治るまで謹慎処分になった。

寮から出ない分、大量の課題も出されたし、稽古にも参加できないからもちろん成績にも響いた。

まぁ…今にしてみれば、あの時痛い目を見ておいて良かったとは思うが」

「七顛八起って感じか」

「は？なんだそれは」

「7回転んでもその度に起き上がる。意志が強いことの例え。ここからずーっと東の国のことわざだよ。」

「ことわざ？」

「うちの国にもあるだろ？『狼が恐ければ森には入るな』とかさ
ちなみに、こっちはその東の国だと『虎の子を得るには虎の巣穴に入らなくてはならない』になる」

「どちらも、一定以上の犠牲を覚悟しないと欲しいものは手に入らない、みたいな意味だな」

「そうそう。語学を学んでるとさ、その地域の風土によって、同じような意味でも言い方が違ったりするから面白いんだよな」

で、ちょっと話が逸れたけど、とシークは再びアダムに向き直る

「アダムはそのあとどうしたの？」

「…………あいつの意識が戻るまで、ずっと医務室に居た。それから…謝った」

「負けず嫌い人嫌いのお前にしては、よくやった方だ」

「うるさい。あと…実はな、師範に頼まれてリョーフキーの部屋に荷物を取りに行った時に、

見たんだ。

校内の逃走経路の地図や、俺や俺以外の生徒達の剣術の長所や短所がまとめられた資料…

なによりも多かったのは、あいつ自身の改善点をまとめたメモだった。

一体何年書き溜めてたんだってぐらい。沢山…

それを見たとき、すごく自分が愚かに思えてな。

俺だって並以上の努力はしてきたつもりだ。だけど、リョーフキーはそれ以上に、

他人を見て、他人から学び、それを己のものする為に努力し、さらに自分が勝つ為に出来うる限りの準備と計画を練っていた。

驚いたんだ。

そうして思った。

あいつは…リョーフキーは、
俺が尊敬するに足る相手だと」

アダムの顔はいつになく温かみに満ちていて

白い肌によく映える薄紅の唇が、柔らかな微笑を浮かべていた

.