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(くそ…速い…)
学校の敷地内を、彼は縦横無尽に走り回る
アダムも体力には自信があるが、それでもここに来てまだ一週間
敢えて土地勘という言葉を使うのなら、彼が圧倒的に有利なのは明らかだった
それにしても、数分で終わるはずの稽古が
まさかこんなにハードな鬼ごっこになるとは流石に予想していなかった
ジェニドが何も言わないということは
これが稽古の本来の目的だったのだろうか?
確かに、戦うにあたって決められたルールは3つだけ
その少ないと言えば少ないが、あからさまと形容するほどでもない
ならば、彼は、
その数少ない情報から
この課題の趣旨を理解したというのか?わかったところで、それを即座に行動に移せるのか?
規定された枠をぶち壊すなんて、そう簡単にできるわけがないのに
…命の駆け引きにルールは不要。
それはスラムを生き抜いてきた自分が一番わかっていたはずだ
だが彼は、
命の危険がない安全なルールの中で守られてきたんじゃないのか
ずっと、今まで。
ならばどうして、
彼は、この規格外の意図を汲み取ることが出来るんだ
………………
既に勝負が始まってから30分。
その頃、ジェニドも含め生徒一同は校内の時計台から眼下を見下ろしていた。
「団長様。よろしいのですか?あんな無茶な戦い方…」
眉根を寄せる生徒に対し、ジェニドは朗らかに笑いかける
「もちろん。ルールの範疇で、どこまで多彩な戦術を展開できるか。それがこの課題の肝だからな。
実際戦場に立って剣を交えてしまったら、剣術の型なんて一々気にしていられない。
だから敢えて、こういう自由度の高い実践的な課題を出してみたわけなんだが…」
その目が、走り回る2人を捉えた
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「………やはり、アダムの相手をさせて正解だったな
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さて、私が与えた一週間の猶予…
どこまで生かしてくれるか
楽しみだ」
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…………
何度か姿を見失いはしたものの、持ち前の勘で執拗に追跡し続けたアダム
ようやく、相手にも疲れが見えてきた
ここでアダムは再び攻撃に撃って出る
手には花壇脇の倉庫から拝借してきた鎌と釘
過度な傷害行為は避けなくてはならないが、足止めと脅しには充分だろう
何も木刀だけを用いろとは、言われていない
今までより、ひときわ力強く、
大地を蹴った
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ノズル - コメントしてくれても…ええんやで(定期) (2018年12月2日 17時) (レス) id: 29d62f5c94 (このIDを非表示/違反報告)
ノズル - 復帰しました (2018年8月13日 9時) (レス) id: da0e8a2348 (このIDを非表示/違反報告)
ノズル - 本作でもよろしくお願いします。 (2018年7月24日 6時) (レス) id: da0e8a2348 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ノズル | 作成日時:2018年7月15日 14時