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あれからどれくらいの時が経ったか。
眩い光の中、目を開けてみると、
そこは田舎の診療所ではなく、見慣れた王城の医務室。
消毒液の匂い。白い天井が視界に映る。
そしてそこに、突然何かが割り込んできたかと思うと
「ようやく気がついたか」
金に、特徴的な白十字の走った瞳。
「…………アダムか…」
「なるほど、その様子だと特に記憶障害は残っていないみたいだな。良かった」
いつもの調子で、淡白に物事を述べるアダム…
だがリョーフキーはそこに、なにか言い知れぬ違和感を感じた
「…なあ、アダム。俺たちがこの国に帰還してから、どれくらい経った」
「………………1週間…くらいだな。ここに帰還したのは一昨日。俺が目覚めたのは昨日。」
「怪我は?」
「…は?」
「だってお前、峠を越えた時 魔力切れであちこち出血してただろう?軍医達にも、もうお前は助からないって言われたし…」
「…そんなに大怪我だったのか……誰からも何も聞かされないから、てっきり気絶していただけかと思ったんだが…どうりで医師達に驚かれたわけだ。
でも…それなら何故…」
ここでリョーフキーは、自分が感じていた違和感の正体に気づく。
そう、
傷跡が見当たらないのだ。
薄い痣は残っているものの、
自分の傷も アダムの傷も、まるで無かったかのように完治している。
その時、朧げに記憶の中で笑いかけた少年の姿が蘇った
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(大丈夫ですよ。必ず、助けますから)
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「あ………ッそうだ…!お前…は、気失ってて覚えてないかもしんないけど
俺がお前を担ぎ込んだ診療所の子!
軍医にも見放されて、たまたま見つけた小さい診療所で…
そう…その子が俺らを治療してくれたんだよ!」
「全く身に覚えがない」
「うーん…ここいらじゃ珍しい黒髪だったのは覚えてるんだけどなぁ……
あぁ、あと
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頰に、痣があった」
「………」
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「…って、お前に言っても仕方ないよなぁ…しょうがない。やっぱり師範に聞きに行k」
「リョーフキー」
「…………ん?」
「そいつの名前。わかるか」
「…いや、わからん」
「診療所の場所は」
「なんとなく」
「案内しろ」
「え……
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はぁ!?」
突然顔色を変えたアダムは
有無を言わさず、王城の外へと走り出た
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無気力人間A(プロフ) - コメ失礼します!この小説、読んでて面白いし入り込めるのでとても好きです。文と文の間も狭すぎず広すぎずちょうどいいので見やすいです!まだ1しか読んでないので4まで読んだらまたコメさせていただきます! (2019年11月18日 15時) (レス) id: 59ffb7dac7 (このIDを非表示/違反報告)
ノズル - コメントありがとうございます!自分も今まで挑戦したことのない文体で、かなり困惑しながら書いている場面も多いので、面白いと思っていただけて幸いです…! (2018年6月27日 7時) (レス) id: 4c1514854c (このIDを非表示/違反報告)
N;Re(プロフ) - なかなか無い形態で面白いです。更新応援しています。 (2018年6月26日 22時) (レス) id: 84a3c96542 (このIDを非表示/違反報告)
ノズル - コメントしてくれても…いいんですよ(定期) (2018年6月26日 20時) (レス) id: 4c1514854c (このIDを非表示/違反報告)
ノズル - レオンブルク聖帝国を聖王国に改変しました。 (2018年6月17日 12時) (レス) id: 4c1514854c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ノズル | 作成日時:2018年4月7日 9時