第14話 焦燥 ページ35
.
“ 騎士の中で、お前は唯一魔力を持たない ”
.
そんな友の言葉が、ずっと胸の奥底に燻っていた。
『お前に期待などしていない』
幼い頃から、片時も離れることのなかったこの言葉。
騎士という夢を捨てられず、ひたすらに希望を追いかけ続けて、
それでも、夢を叶えても、
“現実”は
いつまでもいつまでも
自分を苦しめ続ける。
そんな“現実”を受け入れるしかない自分が
堪らなく、嫌だった。
.
………
リョーフキーは、
ふと思い出した情景に沈みそうになる心を、無理矢理に奮い立たせる。
今はそんな事を気にしている場合ではない。
.
…………戦況は五分。
最初こそこちらが圧倒していたが、やはり歴戦の相手とあって立て直しが早い。
こちら側の手勢にも 死傷者が出始めていた。
(どうする…?いつもなら、ここで退却するのが筋だ……
下手に内部まで斬りこんだら、こっちがやられる)
.
煙幕の向こう側から、女4人の声が響く
(クルエルダー…………やっぱりここにいたか)
.
彼女らとも、戦場では幾度となく顔を合わせている。
4人1組で行動する彼らは、自分と同じ奇襲を得意とする部隊で
別称は“紅薔薇の暗殺術”。
過去の戦では、退路を塞がれて部隊が大混乱に陥り、峠を越えた時には、兵力が3分の1以下になるという大敗を喫したこともある。
余談だが、この時は まだ団長になっていなかったアダムが、所構わず魔法を撃ちまくり、命からがら生還した。
しかし、そのあと。当の本人は魔力切れからくる大量出血で、生死の境を彷徨い
たまたま近くの村に滞在していた藪医者、シークの力で、なんとか一命を取り留めたのだ。
.
そんなわけで、彼らには特に苦い思い出がある。
しかし、彼らがここにいるのなら好都合だ。
なぜなら、それこそ
自分が立派に、“おとり”の役目を果たしていることになるのだから。
.
彼は立ち止まる。
徐々に煙幕が薄くなってきた。
(そろそろ、引き際か)
と、
.
リョーフキーは反射的に飛び退く
刃先が頰をかすめた
「やっと、見つけたわ」
気づけば、四方を囲まれている
それぞれに武器を手にした彼女らは
.
不気味に、微笑んでいた
56人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
無気力人間A(プロフ) - コメ失礼します!この小説、読んでて面白いし入り込めるのでとても好きです。文と文の間も狭すぎず広すぎずちょうどいいので見やすいです!まだ1しか読んでないので4まで読んだらまたコメさせていただきます! (2019年11月18日 15時) (レス) id: 59ffb7dac7 (このIDを非表示/違反報告)
ノズル - コメントありがとうございます!自分も今まで挑戦したことのない文体で、かなり困惑しながら書いている場面も多いので、面白いと思っていただけて幸いです…! (2018年6月27日 7時) (レス) id: 4c1514854c (このIDを非表示/違反報告)
N;Re(プロフ) - なかなか無い形態で面白いです。更新応援しています。 (2018年6月26日 22時) (レス) id: 84a3c96542 (このIDを非表示/違反報告)
ノズル - コメントしてくれても…いいんですよ(定期) (2018年6月26日 20時) (レス) id: 4c1514854c (このIDを非表示/違反報告)
ノズル - レオンブルク聖帝国を聖王国に改変しました。 (2018年6月17日 12時) (レス) id: 4c1514854c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ノズル | 作成日時:2018年4月7日 9時