第10話 来訪者 ページ26
.
………
「パレンティアさーん！！
山においもが自生してたので調達してきましたー！」
「さんきゅーイノセンテ。
と、なると…今夜のおやつはふかし芋だな」
「ば、バター付きですか！？」
「食料温存しないとだから無理」
「で、ですよね……」
ここは南北国境線近く、レオンブルク軍の駐屯地。
山間部の少し奥まったところに
ひっそりと建てられている。
自然の要塞に守られているここは、ユランブルク軍が決して近づくことのできない、要となる場所。
アミスターがマリアを連れて来るまでの間、そこの指揮を任されたのは
紅薔薇の生命線と称されるパレンティアだった。
「しっかし、ほんとユランブルクの奴らは何やってんだか…」
フライパン片手に、彼女は ポツリと呟く
そして、はるか前方に 僅かに霞んで見える山脈を見やった
.
………
ユランブルクとレオンブルクの国境、その北側には
険しい山脈が連なっている。
ユランブルクが“氷雪に閉ざされた国”と呼ばれるのは、偏にこの山脈があるからだ。
冬の時期は、僅かな峠も完全に交通不可能となり
両国間の干渉は遮断される。
かつては海を渡っての貿易が行われていたが、戦時中の今となっては過去の話だ。
そのため、冬が開け、春になり暖かくなると
再び両国は対峙し、剣を交える。
それが、この100年間途切れることなく繰り返されてきた。
だがどうしたことか
ユランブルクの近衛騎士団は、例年よりも来るのが遅い。
おおかた山越えの際に、自然災害か何かで足止めを食らっているのだろうが
パレンティアには、この妙な静けさが
奇妙で、異様なものに思えたのだ。
と、
にわかに外が騒がしくなった。
「わ、私見てきますっ！」
紅薔薇の不壊盾、イノセンテが走り出る。
.
パレンティアは念のため、陣営に残っていた兵士達に指示を出し、厳戒態勢を取った。
よもやユランブルクの襲撃かと思われた、その時
.
「「おねがい！！たすけて…！！」」
.
…聞こえたのは、2人の子供の声。
.
それからさして間を置くことなく、
声の主が、姿を現した。
貧しそうな身なり、擦り切れた服…
兄妹かと思われる2人は
全身 血だらけの男を抱えていた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 56人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
無気力人間A(プロフ) - コメ失礼します！この小説、読んでて面白いし入り込めるのでとても好きです。文と文の間も狭すぎず広すぎずちょうどいいので見やすいです！まだ1しか読んでないので4まで読んだらまたコメさせていただきます！ (2019年11月18日 15時) (
レス) id: 59ffb7dac7 (このIDを非表示/違反報告)
ノズル - コメントありがとうございます！自分も今まで挑戦したことのない文体で、かなり困惑しながら書いている場面も多いので、面白いと思っていただけて幸いです…！ (2018年6月27日 7時) (レス) id: 4c1514854c (このIDを非表示/違反報告)
N;Re(プロフ) - なかなか無い形態で面白いです。更新応援しています。 (2018年6月26日 22時) (レス) id: 84a3c96542 (このIDを非表示/違反報告)
ノズル - コメントしてくれても…いいんですよ（定期） (2018年6月26日 20時) (レス) id: 4c1514854c (このIDを非表示/違反報告)
ノズル - レオンブルク聖帝国を聖王国に改変しました。 (2018年6月17日 12時) (レス) id: 4c1514854c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ノズル | 作成日時：2018年4月7日 9時
