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【高地】
しばらく、怒鳴った声を聞いているとその声は京本くんだった。
部屋から出てくると、力なく目の前の壁に寄りかかって床に座り込んだ。
そして、涙が流れて壁を拳で何度も叩いていた。
高地「京本くん、ここじゃ、人目について嫌でしょ?違う場所に移動しよ?」
そう言うと俺に肩を支えられて、身を任せてくれた。
少しは信用してくれてるのかな。
俺はほとんど人目につかない階段に移動して座り込んだ。
高地「大丈夫?」
京本「....俺、名前を言いたくないんじゃなくて、正確には言えないんだ。言おうとすると、声がでなくなる。」
俺は何かを言う訳じゃなくてただ聞いていた。
京本「名前を文字で書こうとしても手が震えて気持ち悪くなって、書けないんだ....。」
高地「そっか....。でも、いいんじゃない?俺は良いと思うよ。名前は自分が言えるようになったら言えばいいし、書けるようになったら書けばいいよ。焦る必要もない。」
京本「本当に....いいの?」
高地「いいよ。俺が証言する。」
京本「ありがとう、高地。」
高地「えっ!今、高地って....。」
京本「嫌じゃなきゃ良いんだけど....。」
高地「いいよ!全然!むしろ、ありがとう!」
俺を見て、京本くんが笑った。
京本くん、俺はいつまでも待ってるからね。
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作者名:Nana 6022 | 作成日時:2019年8月23日 1時