No.91 : おせっかい ページ44
*
歯を食いしばり、不機嫌な顔つきになった轟くんを見て、自分がやってしまった事の重みを知る。
自覚した瞬間、冷や汗がおでこを伝い背中を這う。
手からもじわじわとした汗の気持ち悪い感触がした。
……完全にやってしまった。
「あ、あのあの！ 別に強制とかじゃないんだよ！？ 何にも知らないくせに生意気だったね……！」
１歩距離を取り悪気がないことを必死に伝えた。
ダメだ、こんなのただの言い訳だ。
「それが仲間ってことだと思うから」なんて、まるで無理矢理話せって言ってるみたいじゃないか。
人には言いたいことと言いたくないことがあるのは当然だ。
轟くんの表情がみるみる険しくなっていった。
──余計怒らせちゃったな
静かな通路に変な空気が漂うのを感じた。
今が何分、何時間、何日にも思えた。
とりあえず轟くん、私にその鬱憤を晴らすために怒鳴り散らしてください。
語弊の無いように一応言っとくと、私に“そっち系”の趣味はない。
「はー……」
すると轟くんが自身の左手でワシワシと髪を掻きながら長いため息をつく。
とっさに驚いた私は強く目を瞑った。
でも痛みは全くない。
良かった。
……一瞬殴られるのかと思った。
「ご、ごめん……私、なんにも知らないくせに言いたいことばっか──」
「もういい」
再びため息をつく轟くんは自分の左手に目を向けて。
「お前と一緒にいると調子が狂う」
「だからもういい」と吐き捨てた。
言葉だけ聞くと凄く乱暴なんだけど、私は驚いたの。
言葉にじゃない。
だってそういう轟くんは。
──笑ってる
とても柔らかい表情をしていたから。
「ど……どうしたの？」
「いや、別に」
左手をポケットにしまった轟くんは次に私を見るなり言った。
「お前って案外“おせっかい”な奴だったんだな」
おせっかい……私が？
まぁでも否定はできないな。
確かにおせっかいだ。
事情を全部知ってるわけじゃないのに首突っ込むなんて、今までの私なら絶対にしなかった。
ここに来て色々変わったな私、なんて。
「そう、かもしれないね」
言われて口に出してみた途端、無駄に入った力が抜け顔の筋肉が緩んだ。
轟くんを見るとほんのり笑ってた。
この時、轟くんはどんな気持ちだったんだろう。
私には分からない。
轟くんのみぞ知る真実。
「とりあえず……」
「……？」
「手、離してくれねぇか。 歩けねぇ」
……あ。
.
No.92 : メダル授与→←No.90 : 泣いてる side S.T.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 152人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ネム(プロフ) - 50話の先制布告が先生布告になってますよ！ 頑張ってください！ (2018年1月26日 3時) (
レス) id: 26189ae388 (このIDを非表示/違反報告)
ぽしゃも。(プロフ) - シナチク@さん» 私の方こそお返事が遅れてしまい、申し訳ありません！ こちらこそ描いて下さって本当にありがとうございました！ 大切にします*(^o^)* (2017年1月8日 9時) (レス) id: 7443ae1f4f (このIDを非表示/違反報告)
シナチク@(プロフ) - 遅くなってすみません！イラスト載せて頂きありがとうございました！m(_ _)mドンっとイラストが目に入って来たのでビックリしました(笑)本当にありがとうございます！！今後とも仲良くしていただけると嬉しいです(´ω｀) (2017年1月5日 22時) (レス) id: 01ec13c248 (このIDを非表示/違反報告)
ぽしゃも。(プロフ) - 物部さん» 初めまして(^^) コメントありがとうございます。 久しぶりにコメントが来たのでとても嬉しいです。 お期待に添えるように精進していきたいと思います！！ (2016年12月29日 1時) (レス) id: 7443ae1f4f (このIDを非表示/違反報告)
物部(プロフ) - 初めまして。面白いです！続き期待しています(^○^) (2016年12月28日 23時) (レス) id: fcc84377d6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ししゃも。 | 作成日時：2016年12月8日 22時
