No.80 : 終わりに ページ33
*
スタジアムの上に立った瞬間、何故か体が硬直した。
──ここからだ……ここから、なんだ……
止まない歓声に圧倒されて何をどうしたらいいのか判断も出来なくなった。
──ここから、私は……
自身を支えられなくなった足は力尽きペタリと床に座り込む。
──私は……私は……
頭の中が真っ白になった。
一体何をどうするんだっけ？
何のためにここに立ってるんだっけ？
分からなくなった。
そんな時、聞き覚えのある声が導いてくれたんだ。
私の大好きな声。
大好きなヒーロー──
「そんな実力で、本当にヒーローを目指してるんですの？」
…………え？
「前から思っていましたわ。 貴女は弱い。 弱いからいつも他人の背中に隠れ、逃げることしかできないのだと」
驚きで顔を上げれば、モモちゃんが私を見下していた。
「この先もそうやっていくつもりなら、いくら貴女が頑張ろうとヒーローになるなど夢のまた夢──」
モモちゃん、なんで？
動かぬ体は、次の言葉に力を失った。
そして……
「貴女はヒーローになどなれない」
刹那、頭に硬いものがぶつかって弾けた。
同時に、“憧れ”に人生を否定されたという“真実”を全身で痛感する。
『入学してしまえば一般の方と変わりませんわ。 それに、“晴陽も一緒に”入学しないと意味がないもの』
酷く耳鳴りがした。
目の前が薄暗くなっていき、意識が遠のいていくような錯覚にも襲われた。
『雨女に何ができるの？』
私は夢を見ちゃダメだった。
『弱い奴はヒーローになれない！』
私が勝とうなんて思っちゃダメだったんだ。
──もう、終わりにしよう
楽になっていいんだ。
そう自分に言い聞かせた私はゆっくり立ち上がった。
深呼吸をして、また深呼吸をする。
肺に空気が出入りしている事と一緒に、掌が熱を帯びていった。
「晴陽……？」
「…………」
掌に帯びた熱はやがて小さな台風の目となり、両手を囲んで風の流れが生まれた。
音を立てて流れる風は、邪魔なもの全てを切り落とした。
強風が吹き荒れる。
──逃げるのはもう、終わりにしよう
「私はもう、決めたんだ」
水色の雲が空に舞った。
.
No.81 : 訂正 side M.Y.→←No.79 : 檻の中 side M.Y.
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ネム(プロフ) - 50話の先制布告が先生布告になってますよ！ 頑張ってください！ (2018年1月26日 3時) (
レス) id: 26189ae388 (このIDを非表示/違反報告)
ぽしゃも。(プロフ) - シナチク@さん» 私の方こそお返事が遅れてしまい、申し訳ありません！ こちらこそ描いて下さって本当にありがとうございました！ 大切にします*(^o^)* (2017年1月8日 9時) (レス) id: 7443ae1f4f (このIDを非表示/違反報告)
シナチク@(プロフ) - 遅くなってすみません！イラスト載せて頂きありがとうございました！m(_ _)mドンっとイラストが目に入って来たのでビックリしました(笑)本当にありがとうございます！！今後とも仲良くしていただけると嬉しいです(´ω｀) (2017年1月5日 22時) (レス) id: 01ec13c248 (このIDを非表示/違反報告)
ぽしゃも。(プロフ) - 物部さん» 初めまして(^^) コメントありがとうございます。 久しぶりにコメントが来たのでとても嬉しいです。 お期待に添えるように精進していきたいと思います！！ (2016年12月29日 1時) (レス) id: 7443ae1f4f (このIDを非表示/違反報告)
物部(プロフ) - 初めまして。面白いです！続き期待しています(^○^) (2016年12月28日 23時) (レス) id: fcc84377d6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ししゃも。 | 作成日時：2016年12月8日 22時
