No.78 : 心地 ページ31
*
廊下に２つの靴音が響いてうるさかった。
一体どこに向かっているのか。
何度も「何処へ行くの？」と訊ねても、切島くんは何も教えてくれない。
薄暗かった通路に光が差し込んできて辺りが明るくなった。
私はその光が眩しくて目を瞑る。
「見てみろよ雨霰」
言われた通り目をゆっくり開いた。
──！
光の向こうで２人の生徒が熱い戦いを繰り広げているのが目に入った。
沸きあがる歓声、マイクさんの実況、太陽の光。
黒い影に呑み込まれても、抗って前に出る桃色の輝きは眩しくてキラキラしていた。
「常闇も芦戸も、ああやって全力で戦ってんだ」
「あいつらだけじゃねえ」と切島くんは続ける。
「ここにいる全員、夢の為にここで一番になろうとしてる。 相手の強さを認めてるからこそ、全力で拳を奮って、自分の出せる精一杯で戦ってんだ」
夢の為に……全力で……。
「お前が“優勝狙おう！”って言ったのも、覚悟があったからだろ？」
「……！」
胸がドキンッと脈打った。
焦った時や驚いた時のような冷えていく感覚じゃなくて、もっと、心の底から嬉しくて温かい感覚。
「俺さ、マジで感動した！ 同時に雨霰をスゲー奴だなとも思った」
「わ、私が……すごい？」
「おうっ！ 雨霰は誰よりもすげーよ！ 優しいし、頭良いし、ダチ思いだし。 それに、騎馬戦で一緒に組んで分かったんだ！！」
切島くんは私の両肩を掴むと私の身長と同じくらいに屈んだ。
彼の綺麗な赤い目が柔らかく弧を描いているのを見て、自然と緊張が解れていく。
鋭い歯を見せて笑い、私なんかにこう言ってくれたんだ。
「雨霰晴陽、こいつはめっちゃ強ぇってさ！」
“強い”
私とは無縁の単語が何度も頭の中で木霊した。
今まで誰にもそんなこと言われたことがない。
もったいなすぎる言葉だった。
でも、切島くんは言ってくれた。
──私は“強い”
私の心は再び脈を打った。
さっきとは少し違って、これは何だか。
そうまるで────
「芦戸さん場外！！ 常闇くん２回戦進出！！」
「お！ いよいよだな！！」
常闇くんと芦戸さんの試合終了の合図がかかると、切島くんに背中を叩かれ体が前に押し出された。
「行ってこい！」
彼は親指を立ててまた笑う。
「俺がここで見てっから！」
切島くんの笑顔が眩しくて仕方がなかった。
同時に嬉しくて、頼もしくて。
それからね──
「うん！！ 行ってくる！！」
──心地がいいの。
.
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ネム(プロフ) - 50話の先制布告が先生布告になってますよ！ 頑張ってください！ (2018年1月26日 3時) (
レス) id: 26189ae388 (このIDを非表示/違反報告)
ぽしゃも。(プロフ) - シナチク@さん» 私の方こそお返事が遅れてしまい、申し訳ありません！ こちらこそ描いて下さって本当にありがとうございました！ 大切にします*(^o^)* (2017年1月8日 9時) (レス) id: 7443ae1f4f (このIDを非表示/違反報告)
シナチク@(プロフ) - 遅くなってすみません！イラスト載せて頂きありがとうございました！m(_ _)mドンっとイラストが目に入って来たのでビックリしました(笑)本当にありがとうございます！！今後とも仲良くしていただけると嬉しいです(´ω｀) (2017年1月5日 22時) (レス) id: 01ec13c248 (このIDを非表示/違反報告)
ぽしゃも。(プロフ) - 物部さん» 初めまして(^^) コメントありがとうございます。 久しぶりにコメントが来たのでとても嬉しいです。 お期待に添えるように精進していきたいと思います！！ (2016年12月29日 1時) (レス) id: 7443ae1f4f (このIDを非表示/違反報告)
物部(プロフ) - 初めまして。面白いです！続き期待しています(^○^) (2016年12月28日 23時) (レス) id: fcc84377d6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ししゃも。 | 作成日時：2016年12月8日 22時
