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筋肉が落ちたぶん、お風呂に入るのも一苦労だ。腕を動かし続けなければいけないから、最初の頃はパンパンになっていた。本当は体を洗うときも補助をしてもらった方がいいらしい。それでも、北斗くんに手伝ってもらうのは嫌だった。なんとか頼み込んでお風呂に浸かれるようになってから入ってもらうようにしている。明るいところで見られるのも恥ずかしいし、抱えられて浴槽に入るのも恥ずかしいんだけど。北斗くんも重くて嫌だろうなと思いながら身を任せるしかない。
「洗い終わったよ。」
「じゃあ入るね。」
私のことを立たせて、軽く持ち上げるようにして入れてもらう。抱っこしてあげるよと言ってくれるけど、床は濡れていてすべるから危ないし、やれることはやりたいから、少し苦しくても自分で足を動かしたい。私がお湯に浸かったのを確認すると、北斗くんは体を洗い始めた。
北斗くんの体は綺麗だ。服を着ているときはそう見えないが、全体的に筋肉量が多く、引き締まっている。肩から脇腹にかけての筋肉なんて見ものだ。中学の水泳の授業以外で、男の人の体なんて見たことがないから他の人がどうかは全く分からないんだけど。
シャワーを浴びているだけで絵になる。神の水を浴びてるみたい。背中の筋肉に沿ってお湯が流れていくのを浴槽から眺めていたら、鏡越しに目が合った。恥ずかしくなって思わず顔を伏せる。
「なによ。」
「いやぁ、綺麗だなって見てた。」
「なによそれ、照れるじゃない。」
照れ隠しか、茶化すような口ぶりだった。私の言葉にきちんと照れてくれることから、私のことを好きでいてくれると安心してしまう。面倒だと切り捨てられても仕方ないと思うから。でもそれより嫌なのは、私のことを気の毒がって別れを言い出してもらえないこと。責任を感じて言えないのではないかと思う。優しい北斗くんなら有り得ることだった。
北斗くんが浴槽に入ろうとするので精一杯身体を縮めていると、体を後ろに倒された。そのまま抱きかかえられ、北斗くんの腕の中に収まってしまった。
「…密着しすぎじゃない？」
「別に恋人なんだから、気にする必要無いでしょうよ。」
「でも、やっぱり恥ずかしいよ。いつもは横に並んでるから。」
2人で入るとなると、やっぱり狭いから工夫して並ぶことになる。試行錯誤して、浴槽の長い辺に垂直になるように体を縮こませて座るように落ち着いた。
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作者名：睡蓮 | 作成日時：2023年5月30日 1時
