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「で、いつまでそうやってるつもり？」
という樹くんの言葉で、私たちが抱き合ったままなのに気がついた。なんとなく恥ずかしくなって顔を赤くしながら離れ、3人で椅子に座った。
「でさ、本題なんだけど。BBQ行かねぇ？」
「はぁ？クソ暑いのに？」
「夏だから行くんだろ。寒い中海でBBQなんてしねぇよ。」
「めっずらしい…。樹がそんなん言い出すなんて。」
「たまにはいいだろ。で、それをAちゃんにも言ったんだけど。」
「私、その日実家に帰るってお母さんに電話しちゃって。」
「え？何それ、俺聞いてないよ。お母さんからも。」
目を丸くする北斗くんに、私は考えていたことをすらすらと伝えた。嘘は言っていないけど、樹くんと口裏を合わせているから少しだけ申し訳ない気持ちになる。
「さっき、お母さんと電話して決めたの。何も言ってなくてごめんね。顔見せなさいってずっと言われてたし、体の調子も良くなってきたから帰ろうかなって。」
「えー？俺に相談なくそういうの決めないでよ。まぁお母さんたちなら安心だけどさ。」
「ごめんね。だから私は行けないんだけど、北斗くんはBBQに行ってきて。」
腕を組んで悩んでいる北斗くんの背中を押す。一度は行くか悩むポーズをするが、本当は樹くんたちとご飯を食べるのが大好きなのを私は知っている。
「えぇ〜？いやぁ、まぁみんないるならね？」
「あいつら全員来るよ。」
「なら行くかぁ。」
よかった。ホッと胸を撫で下ろす。ここまでセッティングしてもらって、北斗くんが行かないと言ったらどうしようかと思った。自由がなんだと難しいことは考えずに、素直に楽しんできて欲しいと思う。やっぱり、私との生活の中にはストレスが多いと思うから。
「いっぱい写真撮ってきてね。」
「…樹の？」
「違うよ！北斗くん写ってない写真は要らない。」
「あらそう？」
樹くんは片目を細くし、口角を下げ、いかにも呆れた顔をした。またいちゃつきやがって、という声が聞こえてきそうだった。
「はぁ。…来週の土日な。」
「え、土日？どっちも？」
「泊まりだから。」
「えぇー？それはちょっとさぁ、気持ち悪くない？まぁいいけどさ。」
「北斗、素直になれよ。楽しみなくせに。」
「やめろよそういうこと言うの。」
2人がじゃれているのを見ると、楽しい気持ちになる。私では引き出せない笑顔が見られるから。やっぱり、若いうちはこういう過ごし方をする方がいい、とまるで歳をとったようなことを考えた。
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作者名：睡蓮 | 作成日時：2023年5月30日 1時
