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「嫉妬すんなって。…Aちゃんって正直今ってどんだけ甘えてもいいような境遇じゃん。事故ってそのまま眠ってて、起きたら体が動かない!とか普通ショックで立ち直れないもんじゃない?」
「多分ね、それはそうよ。俺だったらどうなのかなーって考えると、あんなに頑張るのかどんだけきついことかわかるし。」
リハビリの日は精一杯頑張って、家にいるときもなるべく体を動かそうとしている。寝転んでいると思ったら、作業療法士に教えられた筋トレをしていることも多い。尊敬している、と呟くと樹は頷いた。
「そう。しかもさ、ちゃんと北斗の隣に並んで一緒にいようって考えてる感じがしない?人のことばっか考えてる。こうした方が北斗にとっていいんじゃないかとか。なんか行き過ぎてマイナスにいってる時もあるけど。」
Aは永遠という言葉を使いたがらないし、そういう考えをしないようにしている。終わりが来たときに傷つかないように。身を守るように。だから時折、終わりを覚悟しているようなことを言う。
「そのときはさ、俺が引き止めるよ。俺が大事だからって理由が根底にあるときはね?そうじゃなくても離れて欲しくは無いけどね。だって居なくなられちゃ、俺がダメになるんだから。」
樹がふはっと、嬉しそうに笑った。
「正直だな。でもお前らはそれぐらいちゃんと正直に言った方がいい。お互いのこと考えすぎて、勝手にすれ違うから見ててこええんだよ。」
「Aが帰ってきたらもっとちゃんと言葉にするよ。」
それがいい、と樹は言った。
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作者名:睡蓮 | 作成日時:2023年5月30日 1時