5話 亀裂 ページ6
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5歳になり、あんなに焦凍にベッタリだったAは今では一人で日々鍛錬や勉学を怠らず励んでいた。
この1年でAは本来の5歳児とはかけ離れた生活をしていた為か、
知能や身体能力も平均より高く、あのあどけない様子はいつの間にか残っていない。
独学故にまだまだ未熟な所はあるが、
それもこれもすべて、
焦凍を取り戻す為に、父親に認めてもらう為に少しでも自立するしか無かった。
そんな努力の賜物とは裏腹に、肝心の個性は発現しないまま。
通常、個性の発現は4歳までと言われている。
ある日、念の為にと病院に行ったところ、不安が的中し、「無個性」であると診断された。
『………無…個性…。』
5歳になってからはある程度覚悟していたものの、
あんなに待ち望んで、努力して、焦凍やお父さんの目に止まるかもしれない期待を、たった一言でいとも簡単に片付けられるなんて。
どんなに心身共に鍛えていても、所詮5歳児は5歳児。
その重く伸し掛る事実は、とても耐え難かった。
『これから…どうしたら…。』
ショックを隠しきれない私は母に縋るように見上げると、
何故だか安堵の表情を浮かべていた。
『…お、かあさん……？』
私が無個性で嬉しいの？
私はこんなにも個性が欲しいのに。
焦凍がどうなってもいいの？
色んな思考が目が眩む程、駆け巡って混乱した。
診察を終え、会計をする大好きなはずの母親を横目に見ながら不信感を抱いた。
母親がどんな境遇で、どんな想いでそんな表情をしたかも知らずに。
病院から帰宅し、中庭に向かうと父親と焦凍が鍛錬しているのが見えた。
私は、縁側に座り草履を履くと鍛錬の邪魔にならぬよう、
父親の後ろまでゆっくり近づいた。
「……どうだった。」
相変わらず娘に目を向けることないのに、
その日は、あんなに尊敬していた大きな背中が恐怖でしか無かった。
『無個性でした…。』
涙が出そうなのを堪える。
すると父親はたった一言吐き捨てた。
「……分かっているな？」
『……ｯ…はい。』
間違いない、これは。
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿ お前は、必要ない。
その一言に、そういう意味を含んで言っているんだ。
その凍てついた空気に息が出来なくなり、私は逃げるようにその場を去った。
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わんわん(プロフ) - イェーイさん» 返信遅くなりました申し訳ないです！久方ぶりに手をつけてみて今夜中に5話を編集して公開します。 (8月10日 13時) (
レス) id: 0844f591dc (このIDを非表示/違反報告)
イェーイ(プロフ) - 続きお待ちしております😭😭 (8月10日 2時) (レス) id: d32b35d539 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：わんわん | 作成日時：2020年4月4日 6時
