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2人で向かい合うようにベッドに座り、しばらくの沈黙が訪れる。
2人で話を、と言われたから
飯田くんが何か話し始めるのを待つ。
「…ありがとう、蝶首くん」
「へ？」
顔を上げたかと思いきや、急な辞令に動揺する。
私、感謝されるようなことしてないはず。
「あの時、あの蝶のドームに入っていた時、
君がああ言ってくれたから、僕の目も覚めた」
「あの時…」
そんな、いいこと言ったっけ？
わたしはただ、飯田くんがわたしのことを誤解してそうだから、誤解を解きたいなと思っただけで…
「…この怪我」
目線を怪我の方に落として、再度話し始めた。
「左手の方がひどいらしくてな。後遺症が残ると言われた」
「え？」
そうだ。
だってあの時の飯田くんはボロボロで、腕もぐちゃぐちゃで。
「まぁ、手術で神経移植すれば治る可能性もあるらしいがな」
「…うん、そっか」
そう返事をすると、またしても沈黙が生まれた。
飯田くんは何かを考えるように俯いてしまったし、わたしも頭が回らない。
すると、飯田くんの口が開いた。
「ヒーロー殺しを見つけた時何も考えられなくなった。
マニュアルさんや君に、まず伝えるべきだった」
相槌を打つこともなく、ただ静かに。
飯田くんが言いたいことを言えるまで待つ。
「奴は憎いが奴の言葉は事実だった…
だから、俺が本当のヒーローになれるまで、この左手は残そうと思う」
後遺症は、ヒーローになる上で壁になり得るもの。
手術さえすればなおる後遺症を背負ったまま、ヒーローを目指す。
それは並大抵のことでもないし、誰しもができることではない。
けれど、飯田くんは…覚悟を決めた顔をしている。
その表情は、以前見た時よりも格段に成長している気がした。
「見つけたんだね、なりたいもの」
「あぁ。蝶首くんのおかげだ」
「そんなことない。飯田くんの力に決まってる」
飯田くんはなりたいものを見つけ、それを目指してこれからはもっと頑張ることができるはず。
なら、わたしは？
私のなりたいものってなんだろう。
…やっぱり、人に言える立場じゃないな。
「？どうしたんだ、蝶首くん」
「…なんでもないよ！明日からも、いつも通りがいいなぁ、って」
思っただけだよ。
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作者名：豆腐 | 作成日時：2021年11月25日 19時
