待って、なんて煽んないで【狗巻棘】

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棘side




どうしよう。
狗巻棘、最大のピンチに立たされている。




Aの前では平然を装っていたが自分の部屋に着くと、真っ先にベッドへとダイブして頭を抱えた。




″お泊まりしませんか！″
耳を疑った。



まさかAがそんなことを言うと思っていなかったから。




しかもタイムリーに今日この後。
そんなこと言われると、もしかして…と期待している自分がいてそれが酷くAに罪悪感を感じた。




いや、もしかしてほんとにそういう誘いだったりして…




だって恋人とお泊まりってそういうことだよね…？









「こんぶ、いくら……めんたいこ！」









変な妄想ばかりが頭に浮かんできて、
ブンブンと首を振る。




落ち着け自分。
とりあえず大事なのは理性をなんとか保つこと。




Aに嫌われるようなことだけはしたくない。









と、思っていたのに。









A「ど、どうぞ！」


「しゃけ、」









ドアの先に現れた彼女を見て、思考停止。




お風呂上がりなのか、半乾きの髪。
普段はあまり着ていないであろうもこもこの部屋着。
しかもショートパンツなので生足が見えている。




待って。
聞いてない。











……可愛すぎるんだけど。









とりあえずAと距離をとって、
出されたお茶をぐびぐび飲む。



隣に座る彼女の様子を横目で見ると、
Aも何だかぼーっとした表情をしていた。









「すじこ？」


A「わ！…ごほっごほ。
ごめんね、ちょっと考え事しちゃってた！」









自分で近づいておいて、顔の近さに戸惑う。
それは向こうも同じなのか、
きょろきょろと視線をさまよわせている。




そんなAの頬に、無意識に手を伸ばしていた。




重なる視線。









あーもう、我慢できないや。









愛おしい彼女にそっと、キスをした。

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