先輩と後輩、絆と契り(6-3) ページ2
それからというものの、本当にぬーすけ先輩は毎日毎日俺のところまでやって来た。
俺がまだ眠っている朝方にやってきた時は、鼻の穴いっぱいに葉っぱを詰め込まれ、耳の穴にも詰めようとしていたところで跳ね起きた。
昼時には必ず食べ物を強請ってきて、なんだかんだ言いつつ2人で木の実を食べる。
そのまま日が暮れるまでどうでもいい話をして、そしてまたねという先輩を見送る。
我ながら流されやすすぎだと思うけど、なんだかぬーすけ先輩は初めてあった気がしなくて、あっという間に気を許してしまう……のが悪い!!
別に毎日来るの楽しみにしてへんし!!
「そういえばなな湖さんさぁ」
「なんすかぬーすけ先輩」
「この森から出ないの?」
ぬーすけ先輩に出会ってから4日が経った頃。「ぬーすけ先輩」という名前を口で転がすのも慣れてきた。
今日も今日とて森の中枢部の泉のほとりで、2人でなんでもない時間を過ごしていた時。
〈神域の森〉に住み着いたリスと戯れていたぬーすけ先輩が、ふとした疑問を俺にぶつけてきた。
さりげない疑問がちくっと痛いところを突かれて、俺はあー…と言葉を濁す。
「俺はこの森の『神官』なんで、出られないんすよ。離れちゃいけないっていう決まりなんです」
「……そっか」
ならしょうがないね、と先輩は続けて、惜しいというようにはぁとため息をついた。
『神官』は野蛮な開拓者や凶悪なモンスターから〈神域の森〉を守護するという使命があるために、いつ如何なる理由があったとしてもこの森から出ることはできない。
俺は先輩の意向を受け取れないことに、若干の寂しさを覚えた。
「……まあ、森と外のギリギリの境界線くらいまでなら、行けないこともないですよ」
沈んだ空気を背負ったぬーすけ先輩を励ましたくて、咄嗟に妥協案を示した俺に、それを聞いて振り向いたぬーすけ先輩がニヤニヤしながら問いかける。
「なに、なな湖さん俺のこと大好きだね?」
「は、……はぁ!?違いますよ、先輩が淀んだオーラ背負ってるから、その、元気付けようと……」
「ほらやっぱり俺のこと大好きじゃん」
「ち・が・い・ま・す!!」
言い合っているうちに顔が熱くなるのを感じる……別に本心見抜かれたとかじゃないし。
しばらく不毛な水掛け論を続けた後に、顔を見合わせて2人で笑い合った。
「今度さ、俺が住んでる村の人連れてくるよ。最近はみんなピリピリしてるけど、基本的にいい人だよ」
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あんぴーなっつ(プロフ) - かおりのさん» コメントありがとうございます!琵琶ちゃぷの話はかなり気合入れたので、感動していただけて嬉しいです!閲覧ありがとうございました(*´ω`*) (2019年9月15日 22時) (レス) id: 236992ae33 (このIDを非表示/違反報告)
かおりの - めっちゃ面白いです!琵琶ちゃぷの所すごい泣けました!全然ゆっくりでいいので更新頑張って下さい! (2019年9月14日 22時) (レス) id: a7a49677e4 (このIDを非表示/違反報告)
あんぴーなっつ(プロフ) - ネコさん» コメントありがとうございます!楽しく読んでいただけて私も嬉しいです!閲覧ありがとうございました(^ω^) (2019年7月16日 16時) (レス) id: 236992ae33 (このIDを非表示/違反報告)
ネコ - 毎回ストーリーにドキドキしちゃってます!www更新頑張ってください! (2019年7月15日 21時) (レス) id: ab4778a323 (このIDを非表示/違反報告)
あんぴーなっつ(プロフ) - すぷらさん» わっ!コメントありがとうございます!mzmn界隈で見たことのある方から感想いただけて嬉しいです!これからも頑張ります(*´ω`*) (2019年5月27日 14時) (レス) id: 236992ae33 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あんぴーなっつ x他1人 | 作成日時:2019年3月18日 17時