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重なる想いと記憶の残響(4-8) ページ41

こいろちゃんを回収完了した翌日のこと。
俺たちはベッドに悲しく別れを告げながら、大きなリュックサックを背負うこいろちゃんと共に『サターン』の前でつきよさんと女将さんと向き合っていた。
今や俺たちのリーダーと化しているとりなん先生が、始めに女将さんに頭を下げる。

「女将さん。タダで泊めていただきありがとうございました」

「いえ、こちらこそ。うちの娘を救っていただき、本当にありがとうございます」

優しそうに垂れた目尻に薄く水を張りながら女将さんは深々と頭を下げた。
女将さんには本当によくしてもらった。
ご飯も部屋も全部タダで俺たちを『サターン』に泊めてくれたのだ。

「つきよさんも、本当にありがとう。あなたのお陰でこいろを仲間にできました」

「そんな、私こそありがとうございます。あなた達のお陰で元気なこいろちゃんにまた会えた」

こちらは水色のハンカチで目元を拭いながら、何度もお辞儀を繰り返す。
そもそも俺たちだってつきよさんがいなければ、こいろちゃんの元へと辿り着けなかったわけだ。
彼女の与えてくれたものは大きい。
一頻り感謝を述べると、次へと切り替えたとりなん先生は、地図班に指示を出す。

「とりっぴぃ、次の目的地は?」

「へっへーん、そう言われると思ってとりっぴぃさん実は既にリサーチ済みです!!見て見て!!」

鼻が伸びる幻覚が見えるほどのドヤ顔で羊皮紙の地図を取り出し、せっせと広げるとりっぴぃの周りを囲む。

「町の人たちに聞き込みをした結果、〈ハウンド町〉から王都へ東北の向きに進むとぶつかる……ここ!人呼んで〈神域の森〉!!この森、最近新しい『神官』が就任したんだけど、その人は〈能力者〉でもあるという噂が!!」

さぁ褒めて褒めてと言いたげなとりっぴぃはさておき、〈神域の森〉なる場所をまじまじと眺める。
〈ハウンド町〉の三倍くらいの面積はあるんじゃないかというほどに広大な土地だ……ここに、混ぜメンのうちの誰かがいる。

「こいろちゃん!……行ってらっしゃい!」

「ッ、うん!!行ってきます、きーちゃん!!」

偶数組と、奇数2人を連れて、俺たちは〈ハウンド町〉を出た。







森神の加護により一切の邪悪が弾かれる、人呼んで〈神域の森〉。
その幻想的な風景に不釣り合いな、不恰好な苔石の塔がひとつ。
その最上階にこじんまりと用意されたベッドに張り付くように蹲る男が、

「早く……早くせんと」

泣きそうな声を絞るように、奥歯を噛み締めた。

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あんぴーなっつ(プロフ) - 空屋さん» コメントありがとうございます!この話のバケゆかさんなら快く守ってくれると思いますよ笑閲覧ありがとうございました! (2019年3月17日 13時) (レス) id: 236992ae33 (このIDを非表示/違反報告)
空屋(プロフ) - この作品ものすごく好きです!バケりんに守られてぇ…! (2019年3月13日 4時) (レス) id: 8e09062377 (このIDを非表示/違反報告)
あんぴーなっつ(プロフ) - もるさん» コメントありがとうございます!お褒めにあずかり光栄です……!あんまりガンガン更新はできないのですが、完結目指して頑張ります! (2019年1月30日 18時) (レス) id: 236992ae33 (このIDを非表示/違反報告)
もる(プロフ) - 作風とか設定がしっかりしてて大好きです!混ぜメンのキャラにどれも合っててどのメンバーも好きになっちゃいます 更新大変だとは思いますが、頑張ってください応援しています(^○^) (2019年1月28日 18時) (レス) id: 14f50223ee (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あんぴーなっつ x他1人 | 作成日時:2018年9月16日 20時

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