RPG展開は突然に(1-5) ページ7
敷き詰められた木々の葉で覆われた空の、僅かな隙間から漏れ出る光を背負って、狼よりも高く飛んだ、その人は手のひらで青い光と煙を出しながら氷の槍を形成する。
それを両手で持ち、鏃を狼に据えて思い切り振り下ろした。
〈ぐおおおおおお!!〉
氷の槍が狼の背を貫いて、赤黒い血が溢れ狼が身悶えしながら咆哮をあげる。
そのまま狼を地面と縫い付けるように、勢いよく土に鏃を打ち付けたその人は、一仕事終えた後みたいに額の汗を手の甲で拭いながら、あたしの方に視線をやった。
「怪我は……ないか。大丈夫だったか、megaちゃん」
そう、この人は、お酒とヘイホーをこよなく愛する、
「……と、とりなんせんせぇ……!!!」
鶏のなんこつ唐揚げーー略してとりなん先生に他ならなかった。
「ううう……死ぬかと思ったぁああああ!!めっちゃ怖かったよぉおおおおお!!」
情けないことにも本気で泣きそうになり、あたしはやっと知り合いに出会えたこと、あの緊張状態から解放されたことに安堵した。
とりなん先生はびくびくと痙攣する狼くんに、また手のひらで形成した氷の槍でトドメをさしながら、「無事でよかった」と呟いた。
「あ、megaちゃん無事?」
ざく、と森の枯葉を踏む音と共に、木かげからひょっこりと顔を出したのは、いつもイベントに出る時の格好と同じ、女装をしたバケゆかだった。
とりなん先生の登場シーンとは真逆の現れ方をしたバケゆかに、あたしは不覚にも叫び声をあげた。
「ひどいなぁ、そんなに驚かないでよ」
「ええ!?バケゆかじゃん!なんで!?」
「megaちゃんと会う前にとりなん先生に会ったから、しばらく一緒に行動してたの。異世界っぽい所に来たのは謎」
すっかり土の上に座り込んでしまったあたしに、バケゆかが手を差し出してくれる。
その手を有り難く拝借しながら、あたしはふととりなん先生の手を見つめる。
「てかとりなんさんあの、槍っぽいのどっから出しました?」
「ん、これか?……なんか、俺も狼に襲われた時に、どうにかなれって思ったら足元から氷塊が生えてきて。あー俺なんか氷が使えるんだなって思ったら、感覚で武器とか作れるようになった」
「ええ……」
うひゃひゃ、と小さく笑うととりなん先生も安心したように小さく笑い返してくれた。
そこで、あっと何かに気がついたように声をあげて、木々の生い茂った奥の方を指差したバケゆか。
あたし達の視線も自然とそこへ集まる。
「とりっぴぃと愛ゴリじゃない?」
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あんぴーなっつ(プロフ) - 空屋さん» コメントありがとうございます!この話のバケゆかさんなら快く守ってくれると思いますよ笑閲覧ありがとうございました! (2019年3月17日 13時) (レス) id: 236992ae33 (このIDを非表示/違反報告)
空屋(プロフ) - この作品ものすごく好きです!バケりんに守られてぇ…! (2019年3月13日 4時) (レス) id: 8e09062377 (このIDを非表示/違反報告)
あんぴーなっつ(プロフ) - もるさん» コメントありがとうございます!お褒めにあずかり光栄です……!あんまりガンガン更新はできないのですが、完結目指して頑張ります! (2019年1月30日 18時) (レス) id: 236992ae33 (このIDを非表示/違反報告)
もる(プロフ) - 作風とか設定がしっかりしてて大好きです!混ぜメンのキャラにどれも合っててどのメンバーも好きになっちゃいます 更新大変だとは思いますが、頑張ってください応援しています(^○^) (2019年1月28日 18時) (レス) id: 14f50223ee (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あんぴーなっつ x他1人 | 作成日時:2018年9月16日 20時