日向と木陰 (大学生Ver.)12

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お腹が空いたと言う慧に、
「後で行きたい所があるから、軽く済まさない？」
と俺が言うと、どこ？と当然聞いてくるから、
「内緒。」
と言葉を濁す。

別にバーなんだから内緒にする程じゃないんだけど、クリスマスにいい雰囲気になりたいのかと思われるのが恥ずかしくて言えなかった。


それから本当に軽くご飯を食べて、雑誌に載っていたお店を手を繋いで歩いて探すと割とすぐに見つかって、
「ここなんだ。雑誌で見て、なんかいい感じだなと思って………。」
2人でお店の前に立つ。


そのバーは同じ通りにある飲食店とは少し色合いの違った古い小さな建物で、でも古くさいんじゃなくて歴史を感じる重みのある外観だった。


慧がぽやっと口を開いたまま、
「………バー？」
と意外そうな声でそう言った。

「うん。………実は俺も入った事はなくて……思ったよりいい感じでちょっと緊張してる。」
情けないけど少し小さな声になる俺に、
「……なんか素敵な予感……けど、変なしゃっくりは封印だな、これは………。」
さらに小さな声で慧が真剣な顔で言うからつい吹き出しそうになるけれど我慢して、
「……とにかく、せっかく来たんだし入ってみようよ。」
と、重い木の扉をゆっくりと開けた。

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