日向と木陰 (大学生Ver.)11

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それから海へ着くまで慧は静かだった。

でも元気がないというんじゃなくホッとして力が抜けたという風で、穏やかな空気を漂わせている。

それだけで会いに来て良かったなと思っていると何度目かの信号待ちの時に、
「……あのさ、ゆーとはさ、いつも俺といるだけで幸せだって言ってくれるだろ？だけど俺たちが将来、いざ一緒に暮らし始めたらさ、俺ってお荷物になりそう………。」
なんて慧が唐突に言うから思わず吹き出してしまう。

「何？お荷物って？慧みたいな可愛い荷物ならいつでも背負ってたいけど。」

慧の方を見ると穏やかな顔が消えて、少し張り詰めた様な表情をしているから胸がきゅっと痛くなる。

「………もう少しで着くから。」

信号が変わるタイミングで身を乗り出して慧に近付くと慧も俺の方を向いて目を閉じる。

掠めるだけのキス。

すぐに運転に戻るけど、チラッと慧の横顔を盗み見れば張り詰める前の穏やかな顔に戻っていて
。

……キスには恋人の心を落ち着かせる効果もあるんだな。


そう思うと幸せだけどなんだか恥ずかしくもなってきて、結局それから海に着くまで俺も喋らなかった。

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