日向と木陰 3

(18) ページ18

朝食後の朝礼の様なもので先生から今日の予定と、昼からの自由行動についての指導があってから宿屋を出発してバスに揺られた。
午前中はクラス毎に見学をする。
慧の隣で少しでも睡眠を取ろうとしていると前の席の田中が振り返って、
「なーなー、お前ら2人で自由行動するの？良かったらさ、俺と林とお前らで回らない？」

はぁ？何で？
せっかくの自由行動、慧と2人きりで回るのを楽しみにしている俺は上手く断ろうと考える。
でもなかなか良い理由を思いつかないで困っていると、
「……それじゃ班で行動する事になって、新しい発見もないから課外活動の意味がないだろ？」
半分寝てる慧が口だけはすらすらと動いてそう言った。
すごい、と思って慧を見ていると、
「そりゃそうかもしれないけど、でも2人よりは4人の方がなんか発見ありそうじゃない？」
田中が食い下がる。
「4人での視点と2人での視点は違う。だからいいんだよ………おやすみ、田中。」
それだけ言って完全に眠りに入る慧に戸惑っている田中。
さらば田中よ……と密かに喜んでいると田中の隣の席の林が振り返って、
「だから言ったろ？無駄だって。」
田中が諦めて前を向くとそのまま後ろを向いていた林が何か言おうとした時に慧が、
「……俺はゆーとがいいんだ……。」
寝言なのか何なのか結構はっきり言った。

慧よ、なんてタイミングで言うんだ……。
頭を抱える俺に林が呆れる。
「まじでいちゃいちゃ勘弁な。」
「ち、ちがっ！違う！あのっ………。」
必死で言い訳する俺を無視して林が前を向く。

それからは俺たちの微妙な関係が林にバレてるんじゃないかと気が気じゃなく眠れなかった。
おかまいなしに安らかに眠る慧の寝顔が恨めしくて耳元で、
「………後で覚えとけよ？」
そう言うとなぜか寝ながらへらっと笑う慧。

ドキッとする。
あれ？なんか反応可愛い過ぎる？

……そんな事思う俺ってもう慧の虜じゃない？
やれやれと林みたいに自分自身に呆れながらバスが目的地に着くのを静かに待った。

(19)→←(17)

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す