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陽平は出てきたドアの前から動くことなく、ゆったりとドアにもたれかかったまま。
窓から差し込む陽の光に当たって、オレンジの髪が薄く透ける。
柔らかい笑顔は顔に貼り付けたままで。
だけど瞳は黒縁のメガネのせいで隠されていて、
それなりに付き合いがあるはずの私でも真意を読み取ることは困難だった。
「ヨウヘイ」
昴が落ち着いた声で、一言だけ彼に命令する。
それだけで汲み取ったのか、ふわり。陽平は微笑む。
手に持っていた黒いノートパソコンを開くと、画面に目を落とし、一度中指でメガネを押し上げた。
「...さて、」
再度、顔を上げた彼は
「カツキ ヒトミちゃん」
さっきまでと同じように
「契約を交わそうか」
ただただ、柔らかかった。
その穏やかな、声ですら。
だけど、何かを企んでいて
それはほぼ決定事項であることを私たちに知らせるには十分だった。
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作者名：雪姫乃 | 作者ホームページ：http://ip.tosp.co.jp/i.asp?i=season1999
作成日時：2017年10月10日 19時
