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ジョシュアside
この手術は瞼の裏から脳へと器具を差し込んで行う手術だ。
僕からすれば、簡単な手術だけれど。
ドラゴンの脳は一体どうなっているのだろう。
いくら治癒力があるとはいえ、少し間違えれば死んでしまうかもしれない。
ドラゴンの構造を掴めていないまま、手術に踏み込んでもいいのだろうか。
ジュンフィを早く治してあげたい気持ちと、危険過ぎる手術を行って死なせてしまうかもしれない……ものすごく葛藤した。
そんな僕の気持ちを察したのか、彼は僕の手を握る。
『兄さんの好きなようにやって。僕は大丈夫だよ』
手話でそう伝えるジュンフィ。
もう最後にしよう。
これ以上ジュンフィを傷つけないで、僕たちはこうやってひっそりと暮らしていこう。
そう心に決め、手術に踏み切った。
ドラゴンの脳は人間より一回り小さいため、繊細な指使いが求められた。
他の部位を傷つけないように慎重にメスを入れる。
しかし……僕はそこで重大なミスをしてしまう。
なんと、器具が脳の奥まで入り込んでしまい、海馬を傷つけてしまったのだ。
海馬は記憶を司る部位である。
まずいことになった。
焦った僕はすぐに手術を中止するために器具を抜いた。
その時だった。
「嘘だ……」
ふとジュンフィの腕を見ると、人の腕が伸びていた。
それは紛れもなく彼のもの。
偶然とはいえ、治療法を見つけたのだ。
「ジュンフィ……」
少しずつ、ドラゴンは人の姿を取り戻していく。
信じられない気持ちと、嬉しい気持ち、色んな感情が混ざりあって涙として溢れ出た。
少しずつ時間をかけて確実に人間の姿になったジュンフィ。
5年をかけて治療に成功した。
「ああ……なんてことだ……」
震える手で彼の顔に触れた。
ちゃんと人間の皮膚だ。柔らかくて弾力があって……。
後遺症のせいかドラゴンの毛色だった、銀色は髪に現れている。
彼はゆっくりと目を覚まし、僕を見た。
「ジュンフィ……!」
ようやく帰れるぞ。
そう言おうとした時だった。
「だれ……?」
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らららー(プロフ) - 面白いです!更新頑張ってください!(*・ω・)ノ (2022年6月19日 18時) (レス) id: 26d6d8e78e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:菜々子 | 作成日時:2021年12月8日 13時