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「ドラゴンを人間に戻す……?」
スンチョルさんがそう呟いた後、その言葉に動揺を隠せない警官たち。
その様子から察するに、恐らく。
「……人間がドラゴンになる病をご存知じゃないんですか?」
「そんなの……聞いた事ない」
「口伝のみで伝わる話なんです。だから知っている人は限られてます」
「じゃあ、先代らは人間を殺してきたってのかよ!?」
そう叫ぶ彼らのうちのひとり。
それを皮切りに、彼らは動揺と困惑の表情を互いに見合わせる。
本物のドラゴンもいたかもしれないし、ウォヌくんのように人間からドラゴンになってしまう病をかかえた者かもしれない。
それは、わたしには分からないけど……今はここで立ち止まる訳にはいかないんだ。
「そんなのハッタリだ! どんな理由であれ、ドラゴンを生かしてはおけない!」
もちろん、わたしの話を信じない警官もいる。
彼はボウガンをウォヌくんに向けた。
騒然とする状況の中、スンチョルさんは静かに言った。
「俺はお前を信じるぞ」
その瞬間、ウォヌくんにボウガンを向けていた警官の頬を殴った。
殴られた彼は仲間に体を支えられている。
「スンチョルさん! 何してるんすか!」
「俺は……先代がやってきた事を否定する訳じゃない。だけど、今ここでコイツをやったら俺たちは人殺しになる」
「はあ!? この女のことを信じるんすか!?」
「……A」
スンチョルさんは彼らに顔を向けたまま、わたしに言った。
「この先を進むと俺の知り合いがいる。そこは病院だ。小さいから不安に思うかもしれないが、腕は確かだ。そこに行け」
「スンチョルさん……」
「早く行け!」
スンチョルさんはそう叫ぶと、わたしたちに襲いかかってくる仲間たちを制するために、ひとりで立ち向かって行った。
ここで立ち止まってはいけない。
彼の思いを無駄にしないためにも、逃げなくては。
力を振り絞ってジュンフィを抱え込み、ウォヌくんの背中に乗せる。
一緒に彼の背中に乗ると、ウォヌくんは洞窟の入り口の方へ走り出す。
しかし、入り口には警官たちが待ち構えている。
だけど、ウォヌくんは構わずそのまま直進した。
強い風が起こり、それに圧倒される警官たち。
おかげで目くらましでき、なんとか洞窟から脱出できた。
幸いなことに日は落ちていて、人の目に触れられることはなさそうだ。
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らららー(プロフ) - 面白いです!更新頑張ってください!(*・ω・)ノ (2022年6月19日 18時) (レス) id: 26d6d8e78e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:菜々子 | 作成日時:2021年12月8日 13時