ある日、ドラゴンになったウォヌくんと。 (ページ35)

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「困ったことがあれば街へ来るように」と最後まで親切にしてくれたスンチョルさんは、山を降りていった。

彼の背中が見えなくなった後、わたしはジュンフィに問いかける。

「ねえ……これ、わたしたちのものじゃないよ。いつここを見つけたの？」

「これ」

自身の高い鼻を指す、得意げな顔をするジュンフィ。

なるほど。匂いでここを見つけていたんだ。

調理器具の底にこびりついている、食材のカス……。

わたしたちが山を降りている時に、ここで誰かが料理していて、その匂いを嗅いだってことかな。

だとしたら、わたしも記憶にあるはずだし……。

色々と疑問は残っているけど、ここで立ち止まっている訳にはいかない。

これらが残されているってことは、すぐにでもこれを持っている主が戻ってくるということだ。

ジュンフィを連れ、周囲を警戒しながらウォヌくんの元へと戻る。

「ただいま……」

日が落ちかけの頃、ウォヌくんの元へと帰ってきた。

体を休めていたのか、彼はゆっくりと下げていた頭を上げて手を振った。

「遅くなってごめんね。でも、いいことがあったの！山を降りたらね……」

『すぐにここを出よう』

ウォヌくんは素早くそう手話をした。

いつもなら2日間くらいは同じ場所に滞在するのに、今回に限っては少し焦っているような気持ちがあるようだ。

「でも……手がかりがあるかもしれないの。この街にはドラゴンの伝説が残ってて、もしかしたらウォヌくんを治す手がかりがあるかもしれない」

『とにかく俺はここにいたくない。今すぐここを出よう』

何かに焦っているウォヌくん。

わたしたちがいない間に、何か良くないことでも起きたのだろうか？

上手く意思疎通が出来ず、苛立っているようなウォヌくん。

小さな唸り声が漏れ、洞窟内を揺らし始めた。

「ウォヌ」

そんな時、ジュンフィがウォヌくんの首を撫でる。

「心配しない。僕が、ふたり守る」

ジュンフィはウォヌくんの心情を察したらしく、なだめるように彼の首を撫でてていた。

そうすると、ウォヌくんは落ち着いたようで乱れていた呼吸が落ち着き始める。

その時だった。