#31 ページ31
どうやらスンチョルさんは街の人々から信頼されているようで、店内に入ってきたお客さんのほとんどが彼に愛想よく挨拶をしてくる。
そして、「スンチョルさんのお友達だから」と彼らはわたしたちにまで優しくしてくれるのだ。
すごく暖かい国なんだな……と、街の人々の優しさにしんみりしていると。
「そういや、君たちは最近この国にやってきたのか?」
「はい。今朝来ました」
「それは大変だっただろう。汽車で来たのか?」
「……そうです」
参ったな。スンチョルさんはわたしたちの事をまだ疑っているようだ。
隣に座っているジュンフィは、スンチョルさんが注文してくれたパンをかじりながら、彼の様子をうかがっている。
不安なのか、机の下でわたしの手を強く握っていた。
ジュンフィがいてくれて良かった。ひとりだったら、スンチョルさんに上手いこと丸め込められそうだから。
「なら、この国の事は何も分からないよな。少し紹介してもいい?」
「それは是非お願いします」
聞き込みをする手間が省けた……!
「この国は昔から“ドラゴン”の伝説が根強く言い伝えられている。それは国も公認していることだ」
「ドラゴン……!?」
思わず目を見開いて、呟いてしまった。
もしかしたら、ウォヌくんを治療するヒントがあるかもしれないと思ったからだ。
だけど、食いつけば怪しまれる。
「ドラゴンなんて空想上の話だと思うだろう。しかし、この国はドラゴンの目撃情報が絶えず、俺らのような警官が四六時中見回りをしている。ほら、あそこを見ろ」
彼は窓の外を指す。
建物の間から少し遠くに見える、防壁の上にハトの滞留防止のために立てられるような、鋭く、大きな槍のようなものがいくつも突き刺さっていた。
「あれは“ドラゴン返し”。街にドラゴンが近づいてきた時にスイッチを押すとドラゴンに向けて発射されるんだ。まあ、ここ100年以上は使ったことが無いようだが」
「伝説があるって事は……ドラゴンは存在しているんですか?」
「まあ。信じる人がほとんどだ。だが……俺は最近まで信じていなかった」
「え?」
「俺は見たんだ。ドラゴンが夜空を飛んでいるのをな。ちょうど……」
スンチョルさんはジュンフィを指す。
「お前の髪色のような綺麗な毛並みのドラゴンだった」
278人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「SEVENTEEN」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
らららー(プロフ) - 面白いです!更新頑張ってください!(*・ω・)ノ (2022年6月19日 18時) (レス) id: 26d6d8e78e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:菜々子 | 作成日時:2021年12月8日 13時