ある日、ドラゴンになったウォヌくんと。 (ページ28)

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#28 ページ28

「余所者だな。我々の領域で何をしている」

彼は静かにそう尋ねる。

わたしたちはドラゴンで国境を跨いでいる。

しかも、然るべき場所を通っていないので不法入国となる。

それが発覚すれば強制送還、もしくは塀の中かもしれない。

「……水を汲んでいただけです。すみません。何も知らなくて。もしダメでしたら置いていきます」

わたしは足元に置いている水筒を指す。

彼はそれを一瞥する。

「……お前は何者だ」

「わたしはAです。彼はジュンフィと言います」

「む……僕、やだ……」

彼はわたしの背後に回ると、そこから彼の様子をうかがう。

警戒しているみたい。

「そこのお前」

彼はわたしの背後にいるジュンフィに顔を向ける。

「何者だ」

「う……やだ……」

「やめてください。怖がってます！」

「何故お前が彼女と一緒にいる！答えろ。何を企んでる」

「やだ……」

弱々しい返事のジュンフィ。

何故目の前の男性が、ジュンフィにこんな質問をしているのか。

知り合いなのかと思ったけど、怯えるジュンフィから察するに、そうではなさそうだ。

「わたしが迷惑をかけたのならすみません。すぐに去ります。だから彼を怖がらせないでください｣

「……何も知らないのか」

「え？」

すると、彼は構えていた銃を下ろした。

「すまない。こちらの勘違いだった。今追っている犯人だと思い込んでしまった」

「え……？犯人を追ってるってことは、警察の方ですか？」

「ああ。名はスンチョル。最近、この森の中で凶悪事件が起こったんだ。まだ解決しておらず捜査中だ｣

警察の証であるバッジを見せてくれた。

バッジの形がわたしたちが住んでいた国の物とは違うけど、本物だろう。

「そういうことだ。犯人が彷徨いている可能性があるから、君たちも直ぐにここから出ていくといい。なんなら直ぐ街に案内してやってもいいが」

「い、いえ。大丈夫です。ありがとうございます。気をつけますね……」

スンチョルさんは捜査のためか森の中へと戻って行った。

ふとジュンフィの方を見る。

川の水のおかげで綺麗になった体……もう少し早く彼と出会ってたら、獣の血のせいで誤解が生まれていたかもしれない。

わたしたちは今のうちにその場を離れた。

「確かにここにいる。ヤツ(・・)を捕まえるんだ」