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#18 ページ18

《なるほど。それで買えなかったんだね》

「うん……。本当、ごめんね。非常食なら持ってきてるの。今日だけはこれで我慢してくれるかな?」



リュックの中から非常食のパンと水を取り出し、ウォヌくんに差し出す。

彼の大きすぎる手に、小さすぎるパン。

きっと足りないだろう。

1食くらい抜いても平気だ。

わたしは自分の分をウォヌくんに差し出した。



《Aは?》

「ちょっとお腹壊してて……あんまり食欲ないんだ」

《それならとっておいて。貴重なものだから》

「そ、そう? 分かった」



パンだけをリュックの中にしまい、水を1口飲み込んだ。

明日はこの街の図書館や伝説について調べてみようかな。

そんなことを考えている時だった。



「じゃーん! 食糧持ってきたぞー!」



背後から大声と共に、何か重い物が落ちた音がした。

振り返ると、先程の美少年が血塗れで仁王立ちしている。

突然のことで身が硬直したけど、ウォヌくんの前に立って両手を広げた。

油断していた。彼を見られてしまった。



「やっぱもうひとり(・・・)いた!」



美少年は足元に落とした何かを引きずりながら、こちらへ近づいてくる。

ウォヌくんを見られたのはマズいけど……さっき“ひとり”って言った……?



「この世界で金は1番大切らしい。人間が暮らすには欠かせないもの! 僕、とってきた!」



「えいっ!」と彼はわたしたちの前に、引きずっていた何かを投げつけた。

それは、イノシシの死体だった。



「これ、美味い! 焼くだけ。簡単!」

「あ、あの……」

「食べない? 美味いよ! ご飯っ。ご飯〜」



呆気に取られているわたしをそっちのけで、彼は上機嫌に鼻歌を歌いながらイノシシを処理し始める。

相当慣れているらしく、手際が良かった。

わたしたちはそれを見ていることしかできない。



「みんなで食べる。美味い。僕、知ってる!」



「一緒! 一緒!」と固まっているわたしたちの腕を引く美少年。

わたしたちはそれに従うしかなかった。

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らららー(プロフ) - 面白いです!更新頑張ってください!(*・ω・)ノ (2022年6月19日 18時) (レス) id: 26d6d8e78e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:菜々子 | 作成日時:2021年12月8日 13時

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