√D! (ページ3)

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逢引-黄緑ページ3

城をこっそり抜け出し、あの子が居る村へ行く。
今日も俺があげた本、読んでてくれるやろか。

コンコン

ドアを叩く。これだけじゃあの子は出てきてくれないから、俺とあの子で決めた合図を出す。

コンココン

ヒュルル、と口笛を鳴らす。するとどたばたと家の中から音がして、木製のドアが勢い良く開かれた。

「ゾムさん、いらっしゃい」
「A！今日は新しい本持ってきたで」
「本当？ありがとう」

あんまり発展してない村やからな。本は貴重や。

「あ、あとな。ぬいぐるみ持ってきてん」
「わ、猫？可愛い」

抱きしめられる猫のぬいぐるみに少し嫉妬しながら、花が咲いたようにキラキラ笑うAを抱きしめる。

「な～、まだ同棲は無理よな？」
「うっ……ま、まだちょっと、恥ずかしいや」

林檎みたいに赤く頬を染めるA。俺の彼女は純粋でかわええなぁ。

Aは過保護な両親を持ってたから、人と接することが苦手。
だからこれだけ話せるのは俺だけ。

「もう義母さんの心配も無いねんで？」
「……でも、また急に押しかけてきたら」

魔女のように老いぼれて痩せ細った、骨のような手が彼女に林檎を差し出したあの日をふと思い出す。

「それに、ゾムさんの住んでるところ、人が多いでしょ？」
「うーん……Aが同棲する！って言い切るんやったら人少ないとこに家建てるけど…」
「本当？でも、お金は……」
「Aが気にすることないやんか！」

そう、Aは何も知らんでええ。
俺以外のことなんて知る必要ないもんな。

「ううん……」
「Aは、俺と一緒に居たくないん？」
「そんなことない！ないけど……」

やっぱり、こわい。
そうAは呟いた。

「また……酷い思いをするのかと思うと、どうしても……」
「大丈夫やで。もうあいつは居らへんから」

Aの不安要素は全部潰したるからな。

だから俺とずっと一緒に居ろうな。