_+第58話+_ ページ10
オビside
二人が居なくなったあとも、一瞬の光景が頭から離れない。
その場に立ち尽くしていた俺は、肩に置かれた主の手に、はっと我に返った。
俺を見る主の表情に、ゆっくり口を開く。
｢……主は、知ってたんですね。｣
｢…俺の口からは言わないように言われていた。黙っていて悪かった。｣
主は悪くないでしょ、と軽く笑うと、背中をぽんと叩かれた。
帰る途中、主は手綱を引いたまま、前から目をそらさずに呟いた。
｢……Aどのは、クラリネスに助けを求めて来ていた。｣
｢……助け？｣
｢隣国に攻められているから力を貸してくれ、とな。理由は…｣
｢光る、髪……とか？｣
主は驚いて振り返り、知っていたのか、と口にした。
A嬢が病気で寝ていた時に見た、あの髪。
それが、彼女の最大の秘密だったんだろう。
｢A嬢から直接聞いたわけじゃないですよ、たまたま見ました。｣
｢そうか……それで、兄上は城の部屋を貸すことを提案した。それと同時に、俺は彼女の様子を見ておくように言われた。｣
何故助けないのか、なんて聞かなくても分かった。
だから主はA嬢に使用人として接していたのか…
｢ただ…Aどのが病で臥せっているときに兄上の元に手紙が届いてな。｣
｢誰からだったんですか？｣
｢Aどのの兄上からだ。…父上と母上が亡くなったそうだ。｣
｢……｣
言葉を失う俺に、主は続ける。
｢そして、その日のうちにウィスタル城を出た。居てもたってもいられなかったんだろうな。｣
王城に着くと、主は俺の方を振り返った。
｢……俺は、あの結婚が望まれたものだとは思わない。｣
それは、俺も思ったことだった。
いつも笑ってた彼女は、彼処ではハリボテのように無表情で。
でも───
｢…それが分かっても、俺にはどうすることも出来ないですよ。｣
口から出たのは、そんな情けない言葉だった。
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桐ノ葉(プロフ) - イヴさん» コメントありがとうございます(*_ _)そう言っていただいて嬉しい限りです…！初めての作品だったので拙い文章だったと思いますが、楽しんでいただけたのなら幸いです！ (2019年11月28日 21時) (
レス) id: 09acaf470e (このIDを非表示/違反報告)
イヴ - キュンキュンがとまらない、、、!とてもよい作品ですね! (2019年11月28日 19時) (レス) id: 7c0d35bb59 (このIDを非表示/違反報告)
白銀水龍(プロフ) - ありがとうございます！ (2019年11月22日 17時) (レス) id: 724789ecd5 (このIDを非表示/違反報告)
桐ノ葉(プロフ) - 白銀水龍さん» 居眠りをする様子のことを"船を漕ぐ"という言い方をするのですが、紛らわしいので変えておきますね！コメント有難うございます！ (2019年11月21日 18時) (レス) id: 09acaf470e (このIDを非表示/違反報告)
白銀水龍(プロフ) - 水を注ぐが船を漕ぐになっています。 (2019年11月21日 17時) (レス) id: 724789ecd5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：桐ノ葉 | 作成日時：2019年6月16日 13時
