_+第90話+_ ページ42
Aside
｢…っ、げほっ、｣
思ったより流れの速い川に少し流されて、訳もわからないまま川から出た。
…引っ張りあげられた、が正しいかもしれない。
｢怪我は！？｣
｢…ない、です。｣
私を庇うように落ちたその人は、焦ったように私の顔に手を当てると、私と目を合わせる。
びしょ濡れなのにも、構わずに。
私を覗き込むその金色の瞳を見た途端、壊れたみたいに涙が溢れてきた。
｢…な、んで…なんで、助けるんですか…！？｣
｢！……｣
｢貴方は怪我をしていて、私なんかを庇ったら死んでしまうかもしれないのに…！｣
その傷を作った原因も、私で。
｢もう、嫌なんです！私のせいで誰かが居なくなるのは…
私のせいで、大切な人を失うのは！｣
考える度、苦しくて、苦しくて、たまらなかったこと。
父や母のように居なくなられるのが、怖い。
本当は、助けてくれたお礼を言わなければいけないのに、それをしないで私の不安を勝手にぶつけていく。
半ば叫びながら涙を零すのを、目の前の彼は驚きながら見つめている。
｢私と居ると貴方を危険に晒してしまう…！｣
｢…A嬢、｣
｢誰かを犠牲にすることでしか生きられないのなら、私なんて、｣
｢A！！｣
居なくなってしまえばいいのに、と続けようとした言葉は、オビさんの声に遮られた。
｢…あんたは、一国の王女だろ！そのあんたが、そんなこと言ってどうすんだ！｣
｢っ、｣
初めて聞いた、彼の怒った声。
強く握られた私の腕は、震えていた。
何も言えずぼろぼろ涙を流す私から、オビさんは目を逸らさず続ける。
｢…俺は、あんたの為なら命を賭けるよ。｣
｢…っ、ダメです。私のことなんか放っておいてください、｣
｢あんたを守るって、もう決めたから。｣
｢お願いだから……！｣
続けようとしていた言葉は、オビさんによって止められた。
頭の後ろに手が回されて、噛み付くみたいなキスが降ってきたから。
｢っ、んん……｣
｢…、｣
思わず目を閉じて、オビさんの服を緩く掴む。
ぐしゃりと髪に絡まる指が、妙に熱く感じた。
ふ、と離れたかと思えば、また触れ合って。
すっかり力が抜けてしまった頃に、ようやくオビさんは私を離した。
ゆっくり開かれた瞳が、私を捉えて、
｢――――っ、｣
一瞬顔を顰めたオビさんの体が、ぐらり、と横に揺れた。
｢！？……オビさん！｣
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桐ノ葉(プロフ) - イヴさん» コメントありがとうございます(*_ _)そう言っていただいて嬉しい限りです…！初めての作品だったので拙い文章だったと思いますが、楽しんでいただけたのなら幸いです！ (2019年11月28日 21時) (
レス) id: 09acaf470e (このIDを非表示/違反報告)
イヴ - キュンキュンがとまらない、、、!とてもよい作品ですね! (2019年11月28日 19時) (レス) id: 7c0d35bb59 (このIDを非表示/違反報告)
白銀水龍(プロフ) - ありがとうございます！ (2019年11月22日 17時) (レス) id: 724789ecd5 (このIDを非表示/違反報告)
桐ノ葉(プロフ) - 白銀水龍さん» 居眠りをする様子のことを"船を漕ぐ"という言い方をするのですが、紛らわしいので変えておきますね！コメント有難うございます！ (2019年11月21日 18時) (レス) id: 09acaf470e (このIDを非表示/違反報告)
白銀水龍(プロフ) - 水を注ぐが船を漕ぐになっています。 (2019年11月21日 17時) (レス) id: 724789ecd5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：桐ノ葉 | 作成日時：2019年6月16日 13時
