_+第80話+_ ページ32
Aside
『オビさん、また怪我してるじゃないですか！』
『んー？そんな大したことないって。』
『…もしかして、また怪我増えました？』
『平気平気。』
『……なんだか、最近怪我が多くないですか？』
『…そうだねえ、気をつけるよ。』
傷が増えても、彼は変わらず笑っている。
危ない仕事をしているんだろうか、なんて、自分勝手に納得していたの、だけれど。
バン、と勢いよくウィスタル城の薬室の扉を開ける。
｢………オビさん！｣
｢！…やっほー、A嬢。｣
ひらひら手を振る表情はこの前会った時と全然変わらないのに、白雪さんに手当を受けるその体には、無数の痣や傷があった。
――――オビさんと会った、次の日。
ゼン殿下からの知らせが私の元に届いた。
"オビが帰る途中に襲撃に会ったらしい。Aどのも危ないかもしれないので、用心されよ。"
息が、止まるかと思った。
居ても立ってもいられなかった私は、兄に事情を告げて、急いでクラリネスへとやってきたのだ。
｢…襲撃って、誰に、｣
｢多分、その辺に居た賊がたまたま襲ってきただけだと思うよ。一人でなんとかなるくらいの強さだったしね。｣
偶然に偶然が重なって、オビさんの体に増えていく傷。
どう考えても、変で。
気にしないでいいよ、とオビさんは笑ったけれど、そんなこと私には出来なかった。
執務室の扉を開けると、いつもの如く。
｢…またあの者に会ってきたのですか。｣
｢…怪我をした、と聞いたので……突然飛び出してごめんなさい。｣
わかりやすく大きな溜め息をつくグレン。
仕事を放り出してしまったから、迷惑だったに違いない。
申し訳なく思って私も取り掛かろうとするも。
｢……怪我をしたのは貴方のせいかもしれませんよ、A王女。｣
その言葉に、動きを止めた。
｢え……？｣
｢自覚が足りないようですが、貴方は王女です。友人だという彼が狙われてもおかしくない。｣
ショックで、声も出ない。
｢このまま会い続けるのは、貴方にとっても、あの者にとっても、良い関係とは言えないでしょう。｣
｢そ、れは………｣
｢さらに被害が出る前に、縁を切るべきなのです。｣
一度オビさんの身に危険があった以上、私には言い返せる言葉などなく。
無意識のうちに握りしめていた手は、じっとりと嫌な汗をかいていた。
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桐ノ葉(プロフ) - イヴさん» コメントありがとうございます(*_ _)そう言っていただいて嬉しい限りです…！初めての作品だったので拙い文章だったと思いますが、楽しんでいただけたのなら幸いです！ (2019年11月28日 21時) (
レス) id: 09acaf470e (このIDを非表示/違反報告)
イヴ - キュンキュンがとまらない、、、!とてもよい作品ですね! (2019年11月28日 19時) (レス) id: 7c0d35bb59 (このIDを非表示/違反報告)
白銀水龍(プロフ) - ありがとうございます！ (2019年11月22日 17時) (レス) id: 724789ecd5 (このIDを非表示/違反報告)
桐ノ葉(プロフ) - 白銀水龍さん» 居眠りをする様子のことを"船を漕ぐ"という言い方をするのですが、紛らわしいので変えておきますね！コメント有難うございます！ (2019年11月21日 18時) (レス) id: 09acaf470e (このIDを非表示/違反報告)
白銀水龍(プロフ) - 水を注ぐが船を漕ぐになっています。 (2019年11月21日 17時) (レス) id: 724789ecd5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：桐ノ葉 | 作成日時：2019年6月16日 13時
