_+第63話+_ ページ15
Aside
｢…何のつもりだ。｣
｢…私が貴方を、今ここで殺します。｣
両手で握った長剣は、冷たく、しっかりと私の手に重みを伝えていた。
人を殺す重みも、私が背負っていることの、重みも。
震える剣先は、治っていない病気のせい、ではなかった。
｢…くっ、ははははっ、お前が俺を？その震えた腕で何が出来る。｣
｢……っ、｣
｢状況は何一つ変わってない。俺がお前より上だ。｣
そういった瞬間、素手で剣を掴まれる。
相手の手を伝う赤に、思わず両手の力を抜くと、そのまま剣ごと振り倒されてしまう。
強く地面に体を打ち付けた衝撃で、ヴェールが外れる。
いけない、と思って顔を上げた時には、
─────落とした剣は既に相手の手の中だった。
｢お前が先に動くのは予想外だったが…結果は変わらない。元々お前は消すつもりだったんだよ…ここにいる奴らを全員殺してからな！｣
｢…なに、いって、｣
｢意味もなくこんな馬鹿げた式を開くわけないだろ？ついでに他国の権力のあるやつを消しておくのも悪くないと思ってな。｣
体が指先まで凍りついたようだった。
この人の目的は、ビブリア王国のみならず他国の権力者までもを手にかけることだったのか、と。
｢お前はただの餌だった。これで出番は終わりだ。｣
そこからは、スローモーションのように、ゆっくりだった。
両手で構えられた剣が目の前で、大きく振り上げられて。
私は、ただ、動かずにそれを見上げていた。
この後、私のせいで多くの人が命を落とすのだろうか、と。
私が殺めるのを失敗したせいで、国民は変わらず苦しい生活が続くのだろうか、と。
振り下ろされた剣が、私を斬りつける。
その、寸前。
私の前に、黒い何かが滑り込んで。
鋭い金属音と共に、振り下ろされていた剣が止められた。
真っ白なこの会場に、不釣り合いな黒。
手には、金色の鞘に納まった剣。
それは、私が持っていて欲しいと思って置いてきたもので。
私を守るその背中は、紛れもなく
──────何度も会いたいと願ったその人だった。
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桐ノ葉(プロフ) - イヴさん» コメントありがとうございます(*_ _)そう言っていただいて嬉しい限りです…！初めての作品だったので拙い文章だったと思いますが、楽しんでいただけたのなら幸いです！ (2019年11月28日 21時) (
レス) id: 09acaf470e (このIDを非表示/違反報告)
イヴ - キュンキュンがとまらない、、、!とてもよい作品ですね! (2019年11月28日 19時) (レス) id: 7c0d35bb59 (このIDを非表示/違反報告)
白銀水龍(プロフ) - ありがとうございます！ (2019年11月22日 17時) (レス) id: 724789ecd5 (このIDを非表示/違反報告)
桐ノ葉(プロフ) - 白銀水龍さん» 居眠りをする様子のことを"船を漕ぐ"という言い方をするのですが、紛らわしいので変えておきますね！コメント有難うございます！ (2019年11月21日 18時) (レス) id: 09acaf470e (このIDを非表示/違反報告)
白銀水龍(プロフ) - 水を注ぐが船を漕ぐになっています。 (2019年11月21日 17時) (レス) id: 724789ecd5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：桐ノ葉 | 作成日時：2019年6月16日 13時
