12.T ページ12
〆．
言うとくと、俺としげはそこまで話したことない。
友達っちゃ友達やけど、学年もちゃうし。
やから、なんで俺なんやろ？とは思ったよ。
照史の頼みやから受けたけど。
「しげ」
「…………はまちゃん？」
あ、やば。
普通に今のしげの写真撮ったら心霊写真として取り上げられるレベル。
てか今の声低過ぎてめっちゃ怖かってんけど。
「んー……Aちゃんのことやけどさ」
「Aちゃんっ！？Aちゃんがどうしてんはまだゴルァ！！！！」
「ちょちょちょ、待って、やめて」
あかん、今日他界します。
しげのこの有様はなんと学級問題として取り上げられているらしく、
教室の後ろの掲示板には『中間Aちゃん(天使)と重岡(笑)問題』と題し、『このままでいい派80％、しげが腐りすぎて何か異臭を放ってるから何とかしたい派20％』と書かれている。
「しげは、Aちゃんがなんでしげと距離置いてるか知っとる？」
「知らんわぁ！！ボケ！！」
「理由知ったら、もっとAちゃんのこと好きになるんちゃうかな」
「………何やねん、言え」
なぁー怖いねんけどー。
照史ー！！
とりあえず俺は、自分の身を守りつつ真実を告げた。
淳太のことは、名前出したら淳太にもしげにも殺されそうやったから黙ってたけど。
「………端的に言うと、Aちゃんはしげに彼女がおる思うて、彼女さんが妬かんように離れてんねん」
多分理解してくれたやろな。
………待てよ？
これ、非常にまずくないか？
「Aちゃん………俺に彼女がおること自体は気にしてへんの…？」
まあそこに行き着くわな。
「俺のことやいるはずのない彼女のことを考えるAちゃんは素敵やで？でもそんなん……………や、違うな」
え、なに？こいつ、さらに何か新たな解釈しようとしてる？
「それってさ『好きな人の幸せを願う』ってことかもしれんよな？！」
「あー……」
「絶対そうやん！！Aちゃんは俺のこと好きやけど、潔く諦めて応援しようとする健気な乙女心！！」
逃げよかな。
でも、しげがポジティブ人間で良かったと思う。
「俺行くわ！Aちゃんに俺のこと諦められたら困んねん！！」
あ………行ってもた。
諦めるも何も、そもそもAちゃんに、しげに対する恋心があるわけ………
「……ない、とは言いきれんしな」
うるさい義兄に負けんなよ、しげ。
〆．
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作者名：はゆな
| 作成日時：2018年5月27日 14時
