きづけ、ばか

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「…あの〜、Aさん」

「…ん」

「…お茶、取りに行っていいすか」

「だめ」

「えっ」


Aが、おかしい。

Aは滅多に甘えてこない。
付き合う前から素直にならないところがある。

おかげさまでコイツが俺のことが好きやって気づくまでにかなり時間がかかった。





そんな、Aが。

俺の腰に巻きついて離れない。

すんげぇ嬉しい。
かわいい。かわいすぎる、けど。



喉、渇いたんです。


「お茶…」

「…いいよ」


許可が下りたので立ち上がろうとするけど、Aが手を離す様子はない。


「…あの〜？」

「いいよってば」

「…」

そっと立ち上がってみると、Aも腰に巻きついたまま立ち上がる。

なんだ、これ。



「…歩くで」
「あるけや」

言葉は乱暴なのに、腰に回った手は全然離してくれない。



「…くっつきむし」
「…うるさい」

おいおいおい、かわいい虫やな。

なんやこの幸せな歩きにくさ。





よいしょよいしょと足並み揃えて冷蔵庫の前。

「Aもお茶飲む？」

「ん」


「…Aちゃん？手使わんと飲めへんで？」

飲むって言ったくせに、全然手を離す気配がない。


「のませて」

「ええ？！」

それは口移しとか？！そういう？！


「ふつうに手でのませて」

「あっはい」


ちっ…

まぁ、でも飲ませてあげようと、とりあえず頬っぺたに手を添えてやる。




ん？







「…！
A、熱ある？」

あっつい、顔が。


「だいじょーぶ」

そんなうるうるの目で言われても。




「はい、ベッドに行きましょう」

「え、わっ」

お姫様抱っこでベッドに強制送還。

通りで様子がおかしいはずや。





.




.


「はい、おねんね」

「…んー」

毛布をかけてやると、
ぼーっとしてきゅっとそれを握るA。



なんで、こんなときくらい素直に言えへんかな。



「…何で言わんかったん。きついって」

「べつにきつくないもん」

「そんな苦しそうな顔で言うな。




…俺には、そんなに頼られへん？」

「！！ ちがう！！






…せっかく今日あえるのに、かぜでなしになったらイヤやっただけ」


毛布から目だけ覗かせて、恥ずかしそうにしてるA。


「…なんや、それっ」


かわい、すぎやろ。






「ほんま、かわいくて、むり」

たまらずキスしようとすると、顔を背けられる。




「うつる！！ばかしげ！！」

「うつせ、ばかA」




手のかかる俺の可愛いやつを抱きしめて、キスを落とした。

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