WESTボツネタ集２

《青》嘘コクプレゼン４ ページ9

〆．



拾った木の枝で文字を書く。

「藤」「井」「く」………



「………………危ない」



無意識のような、意識していたような。

本当に好きだったんだなぁ、

口元が緩んだ。

藤井くんの気持ちがどうなってても、

私が彼に恋したのは事実。

こんなに苦しいんだなぁ。

こんなに上手くいかないんだなぁ。

自分に自信が無いと、

恋って本当に最悪だ。

消せない3文字の横に、「ん」を加えた。



「藤井くん………好き、です。大好きです」



言葉にしたら、なんだか泣けてくる。

しばらくブランコで体を揺らしながらその文字を見ていた。

一度泣いたら涙腺がゆるんでしまったらしい。

頬を伝った暖かな涙は、冷たい風を受けて水になる。

ハンカチでそっと拭ったのに、

ガチャンという金属の音でまた涙が溢れた。



「…………どうしたの？遅刻するよ？」

「せぇへんよ。欠席や」

「成績、危ないんじゃなかったの」

「Aのおかげで結構上がってん」



こっちを見ているのか、そうじゃないのかわからない。

顔を上げたら呼吸困難になりそうなほど泣いてしまいそうだった。



「ブランコってこんな低かったっけ」



きぃきぃ鳴らして、影と脚が動く。

謝らなきゃ。

それから言わなきゃ。全部。

私の気持ちと、あなたにはもっと素敵な人がいるはずってことと。

それから、好きって言ってくれてありがとうって、言わなきゃいけないのに。



「…………俺さ、昨日寝てへんねん」

「………、」



そんなに悩ませてしまったのか。

居心地の悪さと申し訳なさで潰されそうだった。

なんとか、嗚咽で変な声になったとしても謝らなくちゃ。

やっとの思いで開いた口は、



「ほんなら、徹夜でパワーポイント作ったから、俺のプレゼン聞いてな？テーマ、俺がAのことを愛してる件について」



ドヤ顔で見せられたパソコンの画面を前に、塞がらなかった。



〆．

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