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名前は言わへんかったけど、俺のことを言っとるのは確かやった。
無意識に口にしてしまっていた、行ってみたい場所ややってみたいこと。
流星は、それをいつも聞いていたから。
諦めていたはずやった。
それでも、心の中でどこか思っていた。
生きたい、死にたくないって。
それに気づいた上で、流星は俺に何も言わへんかったんや。
生きることを諦めて気丈に振る舞う俺を、これ以上傷つけないために。
「···っりゅうせ、ごめん、ごめんねっ」
自分だけ、辛いわけないやないか。
俺が流星の立場だったら、恋人が死を受け入れる姿を見て辛い思いをしないわけがない。
生きてほしいってそう思うに決まっとる。
流星はそんな自分の気持ちを押し殺して、俺に笑顔を向けていたんや。
それもこれも全部、流星の優しさやった。
「りゅうせぃ···おれっ、死にたないよ···」
愛する人の想いを知った今、自分が死ぬ未来を想像することなんて出来へんかった。
奥底に閉じ込めたはずの気持ちが、ぶわぁって溢れかえって。
生きたい。
流星のために、
俺に笑いかけてくれる流星と一緒に。
俺のすべてであるこの人と、笑いあいたいと思ってしまった。
「···ふっ····うぁぁ···」
立っていられなくて、その場にずるずると座り込む。
ポタポタと涙がこぼれ落ちて、視界が歪んだ。
生きることから1度目をそらした俺に、
この想いを抱くことは、許されることやないかもしれへん。
それでも、永遠とは言わへん。
普通の人と同じ分だけでいい。
やから、もしも神様がいるのなら
どうか俺たちに、幸福の時間を。
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もも - せんさん初めまして。ほっこり温まる家族のお話とても感動しました。このお話を読んでたくさんの愛のカタチが存在してその1つ1つに意味があることを考えさせられました。どうかこれからも無理なさらず、頑張ってください。応援してます! (2019年2月22日 10時) (レス) id: a4141f2fac (このIDを非表示/違反報告)
モンチ(プロフ) - せんさんこんにちは。新作ありがとうございます。せんさんの作品本当に大好きです、頑張ってください! (2019年2月20日 10時) (レス) id: 21949260e2 (このIDを非表示/違反報告)
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