2-18 ページ46
ダイナがアリスの足元に本を置いて見上げてくるので、アリスはしゃがみ込んで本を手に取った。
一見すると大きめの、ページ数の多い絵本だ。
ただし表紙もページも見る限り真っ白で、淡く光を放っている。白紙のノートにも見えかねないが、ハードカバーの表紙と大きさや厚みといった体裁がそれを"絵本"だと感じさせた。
「これを読めばいいのね？」
ダイナは頷くことはせず、ただじっと大きな瞳でこちらを見上げてくる。
(分からないけど…とにかく、開いてみよう)
大きく息を吸い込み、覚悟を決めた表情で本に手をかける。
絵本の1ページ目が開くと、
「……ーーっ！？」
アリスの視界は眩い光で溢れかえった。
＊＊＊
(…ここ、は…？)
ようやく目を開けたとき、アリスの視界は未だ白一色に染まっていた。
ーーここへ来たか。異界より現れた《
「！ あなたは…！」
ーーここは"記憶"であり"希望"
ーー私より生まれ、私に託された軌跡
「！」
白一色の視界に光が集まり、まるで影絵のように動いた。
豊かな髪を靡かせる幼い王女。
両親はある日病床に伏し、戸惑いながらもプリンセスは王冠を戴く。
女王の身体より大きな地図。
その周りで何事か言い争う大人たち。
言い争いは激化し、誰かが地図を破り始める。
慌てて地図をかき集める女王。
しかしそんな女王に大人たちは気付かない。
地図はついにぼろぼろの紙切れになってしまった。
女王はなおも争う大人たちに何かを言った。
大人たちの形をした影は散ってしまった。
一人きりになり、呆然と立ちすくむ女王。
女王は地図の破片を一人で繋ぎ合わせた。
けれど元通りにはならず、触れたところから破片はぼろぼろと崩れていく。
ついに涙を零しながら地図だったものをかき集める幼い女王。
地図は触れれば触れるほど元には戻らなくなっていく。
やがて女王は成長し、けれど片時も地図の破片をかき集めることはやめず。
もう女王の目から涙は零れなかった。
ただ、義務的に地図だった破片を掻き集め、壊れていくさまを目に移す。
それを終わらせたのは一本の弓矢だった。
矢が女王の掌を貫いている。
女王は緩慢な仕草で顔を上げ、無礼な来訪者たちを目に映した。
「……え？」
そこにいたのは弓矢をつがえた女性。
その後ろに控える2人の男性と、少年と少女が一人ずつ。
その胸元には、一様に白いチェスの駒が輝いていた。
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ユエル(プロフ) - クルルさん» コメありがとうございます！不定期更新ですが頑張りますね(^^) (2021年1月11日 13時) (
レス) id: 673d6f73a6 (このIDを非表示/違反報告)
クルル(プロフ) - めちゃくちゃ面白い！！！！サイコーです！！続き待ってます！！ (2021年1月3日 23時) (レス) id: 297c8a2c3d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ユエル×日向なつ x他1人 | 作者ホームページ：
作成日時：2017年5月21日 1時
