2-1(日向なつ) ページ29
「ハッター、おかえりなさい! アリスさんも!」
「おかえりなさい」
家へと帰り、マーチとスリーピーに迎えられたハッターはもうすっかりいつもの涼しげな顔をしていた。
(ハッター……さっきまで、あんなに動揺してたのに)
アリスの不安げな目に気付いたのか、ハッターがちらりとこちらを振り返る。
小さく浮かべた苦笑が「大丈夫だ」と言っているように見えて、アリスは思わず開きかけた口をつぐんだ――そんな顔をさせたいんじゃない。
「ハッター……ネズミ、もうげんかい」
「だからスーリ、ぼくちゃんとお昼寝しようって言ったのに……ふぁあ」
「ああスーリ、目をこするな。
マーチ、悪いがスーリを寝かせてやってくれるか? 起きたら飯にしような」
ハッターがそう言って隣室にあるらしいキッチンへと歩き出したので、アリスはマーチの先導でいかにも眠ってしまいそうなスリーピーを抱き上げる。
子供たちの寝室はこれもまた広々とした、海外の童話で見るような子供部屋だった。
ふかふかとした大きなベッドに寝かせてやれば、まだ幼いスリーピーはことさらに小さく見えた。
マーチがあとは寝かしつけておくと宣言したので、アリスはハッターの手伝いを買って出た。
「ハッター」
「ああ、アリスか。チビ達は?」
「スーリは寝かせておきますって言ってたよ」
「飯ができたらマーチも起こしに行かないとな」
「ふふ、可愛いじゃない」
「まあな」
さすが不思議の国というべきか、キッチンもまたアリスの知る台所とはわけが違っていた。
レンジや冷蔵庫、炊飯器なんて家電は一つもないし、小さな窯がオーブン替わりのようで大きな麻袋には薪と炭が詰まっていた。
「さて――“
ハッターが手を叩いて何かを呼びつける。
「なにそれ?」
「ああ……おまえの世界じゃ違うのか。
ここじゃ、食料は
ハッターがそう言い終えるや否や、ガラス戸をすり抜けて(!)何かが二人の目の前へとやってきた。
8人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ユエル(プロフ) - クルルさん» コメありがとうございます!不定期更新ですが頑張りますね(^^) (2021年1月11日 13時) (レス) id: 673d6f73a6 (このIDを非表示/違反報告)
クルル(プロフ) - めちゃくちゃ面白い!!!!サイコーです!!続き待ってます!! (2021年1月3日 23時) (レス) id: 297c8a2c3d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ユエル×日向なつ x他1人 | 作者ホームページ:
作成日時:2017年5月21日 1時